100回目のラグビー早慶戦 次の100年へそれぞれの特別な思い「至上命題」「財産」 (3ページ目)
【早稲田大は次なる山場「早明戦」を見据える】
前半4分、早稲田大はキックカウンターからSH島本陽太(4年)が先制トライを奪い、前半10分にもFW陣の力強いモールでFL安恒直人(3年)が左中間に押さえた。さらに前半20分にはスクラムを起点に左へ展開し、最後は伊藤がインゴールにグラウンディングして21-0とリードを大きく広げた。
慶應義塾大も負けてはいない。すぐさま反撃を開始し、前半23分には裏のスペースにキックした山田が自らキャッチしてトライ。前半33分にもゴール前のモールからFWの力でHO中山大暉(3年)がねじ込み、14-21と追い上げた。
今年も僅差の戦いになるか──。そう思われた前半ロスタイム、早稲田大がモールからHO佐藤健次(3年)がトライ。さらに後半3分にもスーパールーキーWTB矢崎由高(1年)のトライと、後半11分にはCTB野中健吾(2年)がPGを決めて、慶応義塾大を大きく引き離す。
その後、互いに1トライずつ取り合って、最終的には43-19のスコアでノーサイド。100回目の早慶戦は早稲田大の勝利で幕を下ろした。
この試合のPOM(プレイヤーオブザマッチ)に選ばれたのは、早稲田主将の伊藤。
「慶應さんは日本で一番古いチーム。100回目の対戦に重圧を感じないようにしたが、やはり感じてしまうもの。すべてにおいて勝つことを大事にしてやってきたので、固いゲームになったが勝ててホッとしました」
一方、早慶戦に4年間一度も勝利できなかった慶応義塾大の主将PR岡広将(4年)の言葉。
「慶應義塾大としても、部としても、大学4年間(早慶戦に)特別な思いが強くて、この試合に勝ちきれなかった悔しさが大きい。(明治戦の敗戦から)いい準備ができていたが負けてしまった。現状の実力として劣っていた。完敗だった。後輩たちには日々の練習の積み重ねを重要視してやってほしい」
勝利を収めた早稲田大にとっては、12月3日の「早明戦」、そして大学選手権に向けて、さらなる自信を得た試合になったことだろう。対して慶應義塾大は、「春からやってきたブレイクダウンをもう一度、見直して磨き上げたい」(青貫監督)と前を向いた。
100回目の早慶戦は早稲田大の白星で幕を閉じた。だが、両校の伝統はこの先の100年間も続いていくはずだ。
著者プロフィール
斉藤健仁 (さいとう・けんじ)
スポーツライター。 1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。2000年からラグビーとサッカーを中心に取材・執筆。ラグビーW杯は2003年から5回連続取材中。主な著書に『ラグビー『観戦力』が高まる』『世界のサッカーエンブレム完全解読ブック』など多数。
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