ラグビー日本代表・姫野和樹がオールブラックス相手に完全復活。7点差の惜敗に「僕らはもう、よかったなあで満足するチームではない」 (3ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●撮影 photo by Saito Ryutaro

 直後、トライの確認のためのTMO(ビデオ判定)となったが、姫野は「いや、トライでしたよね」と笑い飛ばした。

「左サイドはバックスの選手だったので。ディフェンスはうまくないだろうし、からだは僕のほうがでかいし、フィジカルでは優位性があると思ったので突いたのです。そうしたら、ちょうど選手の入れ替えで、スペースが空いたのです」

 ゴールも決まって、4点差となった。その時の心中を姫野はこう、振り返った。

「時間がなかったんで、"はよ(ゴールキックを)蹴って、いこう"と」

 日本の円陣では、こう言い合った。

「あとワントライで追いつける、逆転できる。自分たちが同じ絵を見ること、セイムページを見て、しっかりボールをキープして、トライまで取りにいこうって」

 最後、NZにPGを蹴り込まれ、過去最少点差(7点)で試合終了となった。大健闘と言っていいだろう。でも、姫野は言った。その言葉にチームの成長の跡がみえる。

「やっぱり勝てなかったのは、悔しいですよ。日本代表は惜しい試合をして、よかったなあと見られがちですけど、僕らはそこに満足するチームではもうないんです」

 だからだろう、姫野は課題の言葉を継いだ。

「ペナルティーが多すぎましたね。数的優位をうまく生かせなかった。疲れから、集中力が散漫になったりしたのかもしれませんけど。(課題は)そこですね」

 姫野の座右の銘は、中学時代の恩師に教わったという『常に一流であれ』。一流とは、失敗しても起き上がり、チャレンジを続けられる人を指す。姫野は日々の鍛錬に励み、考え、いつもチャレンジしてきた。失敗もけがも乗り越えてきた。ひたむきに。

 素材は文句なしだ。日本代表のデビュー戦が2017年11月の豪州代表戦(30-63)だった。この時、帝京大を卒業したばかりの23歳。LOで出場し、豪快なトライを奪った。

 ガムシャラだったあの試合から5年。キャップ(国別代表戦出場数)は「23」となった。記者から、あのデビュー戦との違いを聞かれると、28歳は笑った。

「あれから、大人になりました」

 いや、いろんな経験を積み、ラグビーナレッジ(知識)が高まった。つまりはクレバーになった。心身ともにたくましくなった。

 これから、日本代表の欧州遠征が始まる。11月12日に世界5位のイングランド、20日には同2位のフランスと対戦する予定だ。ミックスゾーンの取材時間が終わる。姫野は最後、言葉に力を込めた。

「勝ちにいきます」

 "世界最高のバックロー(フランカーとナンバー8)になる"が目標。タフガイの姫野は、ラグビーの「一流選手」として、着実に成長をつづけるのだった。

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