ラグビー日本代表・姫野和樹がオールブラックス相手に完全復活。7点差の惜敗に「僕らはもう、よかったなあで満足するチームではない」 (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●撮影 photo by Saito Ryutaro

値千金の姫野のジャッカル

 確かに、日本は強くなった。何といっても、コンタクトエリアで当たり負けしなくなった。外国人選手の存在もあるだろうが、姫野ら日本人選手のフィジカルもスキルもマインドも間違いなく、変わった。 

 後半14分だった。日本は自陣ゴールライン前でのピンチが続く。NZの怒とうの攻めを受け、しぶといタックルでしのぎ続けた。ここで姫野は攻守を切り替える得意のジャッカルを狙っていた。黒いジャージが固まってなだれ込んできた刹那、桜のジャージの背番号7は両手をひろげ、相手ボールにがばっと襲い掛かった。

 NZはボールを離さず、ペナルティーを奪い取った。マイボール。姫野は右腕を振り上げ、ガッツポーズを作った。試合後、「狙っていたの?」と聞けば、「はい」と即答した。

「見えていました。今週はブレイクダウンのボールに対してのアタックマインドというのを、自分で意識してきました。それがいい結果になりました」

 姫野は今年、リーグワンのトヨタヴェルブリッツ(旧トヨタ自動車)に戻った。今年4月の試合で左太ももを肉離れした。全治数カ月。でも、「けがをする前よりも強いからだを作る」と信頼するトレーナーとリハビリを続けながら筋力強化にも励んだ。

 9月、日本代表候補の合宿に合流し、先の豪州Aとの第1戦に途中出場し、第2戦では先発出場した。足を少し痛めた。第3戦は大事をとって欠場。このNZ戦に照準を合わせ、状態を上げてきていた。

 姫野は満足そうに漏らした。

「コンディション的にはすごく上がってきている。からだの調子がすごくいいし、ラグビーの感覚が徐々に戻ってきたという感じですね」

リーチ・マイケルも復活に太鼓判

 一緒にプレーしたFLリーチ・マイケルも姫野の復活に太鼓判を押した。「きょうはすごかった。ブレイクダウンも、ジャッカルも。もう完全に(体調は)元に戻った」と。

 特に状態の良さを象徴したのが、後半26分の密集でのタフガイぶりだった。ジャッカルにいったところ、首筋に、NZの巨漢ロック(LO)ブロディ―・レタリックの強烈な頭突きを受けた。それでも少しもひるまず、ボールが相手側に出ると、スクラムハーフをつぶしに行った。

 この頭突きが危険なプレーということで、レタリックにはレッドカード(退場)が出た。日本は1人多い、数的優位に立つことになった。

 そして、ノーサイド間際の後半39分だ。日本は反撃し、姫野はゴールライン間際のラックの左サイドを突いて、左中間に飛び込んだ。ここでも、相手ディフェンスの動きをよく見て、バックスが立とうとしていたサイドに持ち込んだ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る