【卓球】世界が驚いたシンガポール戦の圧勝劇。
日本が仕掛けた「ふたつの戦略」 (4ページ目)
平野は国際試合での実績こそ福原、石川に一歩譲るが、日本選手権は18歳で初優勝したあと、通算で5回の優勝と、国内での実績は抜群だ。彼女の強みは、高い技術やパワーではなく、勝負どころで最高のプレイをする、その精神力である。
「頑張ることができなかったら、私は凡人以下です」という平野は、アスリートというより、勝負の道を究めようとする、武道家の雰囲気を漂わせている。
勝負どころでの驚くべき集中力で、攻めに転じて最高のプレイをする。第2ゲームの8-10から見せた2本の攻撃的なフォアハンドは、まさしく平野の真骨頂だった。
日本に敗れたシンガポールは、3位決定戦では韓国を3-0で一蹴して銅メダルを獲得している。やはり弱いチームではなく、3選手が特に調子を落としていたわけでもないことは、この結果からも分かる。
優れた戦略と、福原、石川、平野の、個々のコンディションが見事に調和して、ターゲットにおいていた準決勝で最高の試合をするというミッションを、日本はほとんど完全な形で遂行したのである。
メダルを獲得した中国、日本、シンガポール。そして3位決定戦で敗れた韓国。北京五輪でもメダルを争ったこの4カ国(北京では日本は4位)の中で、中国出身選手がひとりもいないチームは、日本だけだった。シンガポールは3人とも中国出身の帰化選手で、韓国にもひとり中国帰化選手がいる。帰化選手なしで、メダルを争っているのは、日本だけなのである。
日本の女子代表は、07年以降、すべての世界大会で、日本生まれの選手だけでチームを構成している。意図的に帰化選手を排除しているわけではなく、世界ランキングや、国内選考会で、上位から順に選手を選んでいくと、結果的にそうなっているということだ。
日本のメダル獲得は、世界の女子の卓球において、独自の路線を歩んで成果を挙げた、ということでもある。この意味でも、意義深いメダル獲得だったと言えるだろう。
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