【卓球】世界が驚いたシンガポール戦の圧勝劇。
日本が仕掛けた「ふたつの戦略」 (3ページ目)
この勝利にも、内幕はあった。ふたつの戦略が、功を奏したのである。
ひとつはフォンに対する戦略だった。日本卓球協会の情報戦略担当が、オリンピックに向けてフォンの得点、失点のパターンを分析。その結果、危険を犯して強打を決めようとするより、長いラリーに持ち込んだ方が、フォンはミスを犯す可能性が高いという結論が出ていた。フォンの不得意なバックを突いて、ラリーに持ち込み、よほど明白なチャンスボール以外は、強打はしない。福原は、この戦略を徹底した。
その結果、第1ゲームは、福原の方から、打ち抜く強打で奪った得点は1点もなかったが、11-9で取ることができた。バックハンドの長いラリーになると、フォンはたびたびミスを犯した。
福原のショットの感覚がよく、勝負に出たサーブレシーブなどがよく入ったことも事実だが、フォンから勝利を挙げることができた裏に、情報戦略の成功があったことは間違いない。
もうひとつは、第3試合のダブルスの組み合わせにおいて、相手の意表を突いて石川、平野のペアをぶつけたこと。この戦略も吉と出た。
この試合で日本のダブルスは、準々決勝のドイツ戦で組んだペア、福原、平野になるのでは、と予想されていた。シンガポール側もその予想だったようで、日本戦に向けたダブルスの練習では、福原と同じタイプのラバーを貼った選手を相手に練習していた。予想外の組み合わせに、対策練習が十分だったとは言えないだろう。
石川が第2試合に出場したため、石川、平野でいくと、石川が2試合連続でゲームを行なうことになり、長い試合になった場合は、体力面で不利になる。それでも村上監督は、このペアで勝負に出た。
結果は、11-3、13-11、11-4での勝利。流れを決めた第2ゲームでは、8-10と相手にゲームポイントを握られたが、そこから石川のサーブのあと、平野の3球目のショットが連続して決まった。このゲームを取られれば五分の状況になる、1本のミスも許されない中で、最初は強烈なフォアドライブでミスを誘い、次は短く返してきた相手のサーブレシーブを、台上で強く払って得点につなげた。
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