【卓球】世界が驚いたシンガポール戦の圧勝劇。日本が仕掛けた「ふたつの戦略」
シンガポールに勝利し、日本卓球史上初となるメダル獲得を確定させた(左から)福原愛、石川佳純、平野早矢香の3人 ロンドン五輪のあと、産業能率大スポーツマネジメント研究所が行なったインターネット調査によると、「感動度」の部門で、福原愛が1位、石川佳純が2位だったという。もともとふたりの知名度が高かったこともあるとは思うが、メダル獲得を決めた準決勝、シンガポール戦の勝利には、それだけ人々の心に訴えるものがあった、ということだろうか。
シンガポール戦は、間違いなく特別な勝利だった。どこが、どのように特別だったのか。改めて、そのことを明確にしておきたい。
オリンピックで団体戦が採用された2008年以降、世界の卓球界において、女子の強豪国は固定化されていた。オリンピックと世界選手権でメダルを獲得した国を見ていくと、次のようになっている。
金 銀 銅
08年世界選手権 中国 シンガポール 日本、香港
08年北京五輪 中国 シンガポール 韓国
10年世界選手権 シンガポール 中国 日本、ドイツ
12年世界選手権 中国 シンガポール 韓国、香港
世界選手権はシングルスのみの5試合制。オリンピックはシングルス4試合、ダブルス1試合の5試合制だから、試合の方法は異なるものの、決勝戦は常に「中国-シンガポール」だった。
07年以前、シンガポールは一度もメダルを獲ったことがなかった。それが決勝戦の常連国になったのは、現在のフォン・ティエンウェイ、ワン・ユエグ、リ・ジャウェイという、レベルの高い3人の中国帰化選手がそろってからだ。10年の世界選手権では、93年以来、団体戦8連覇中だった中国を破って優勝。今年3月の世界選手権も準優勝で、事実上、女子の卓球界は中国、シンガポールが2強を形成していたと言ってよかった。
日本も、上記の中国帰化選手3人がそろって以降のシンガポールには、一度も勝ったことがなかった。08年の世界選手権では準決勝で対戦したが、結果はワン3-0石川佳純、リ3-1平野早矢香、フォン3-0福原愛で敗戦。
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