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NBA伝説の名選手:ジェイソン・ウィリアムズ  予測至難なプレーでファンを魅了した「コート上の魔術師」 (3ページ目)

  • 秋山裕之●文 text by Akiyama Hiroyuki

【 "瞬間最大風速"の衝撃と家族への愛情】

 ウィリアムズはNBAキャリア計12シーズンで平均10.5得点、5.9アシスト、1.2スティール。2年目以降はアウォードもなければ、スタッツリーダーに立ったこともない。

 ただ、キングスのユニフォームを身にまとっていた時に与えた"瞬間最大風速"の衝撃は強烈そのもので、2000年のオールスターウィークエンド初日に迎えた1年目と2年目の選手による競演ライジングスターズで披露した"エルボーパス"は衝撃的だった。

 ウィリアムズは左から右へビハインド・ザ・バックと見せかけて右ヒジに当てて(左サイドにいる)チームメイトへ送るという離れ業をやってのけた。高校時代にその動きを学んだとはいえ、NBA入り後はそのエキシビションゲームで初めて披露したという。

「これまでの人生で3万回はトライしてきた。でも成功したのはたぶん3回くらい。本気でそれだけたくさん練習したのにね。これがどういうことか分かるよね?」

 バスケットボール界へ衝撃を与えた"エルボーパス"がどれほど難易度の高いパススキルなのかは、ウィリアムズをはじめとするPG経験者にしかわからないことなのかもしれない。

 ストリートボールのプレーをそのままNBAのコートへ持ち込んだ「コート上の魔術師」は、元やり投げ選手で妻のデニカ・キスティと3人の子を持つ父親でもある。

 2006年の優勝はウィリアムズにとって唯一の称号とも言えるのだが、2024年9月に受けた米メディアのインタビューで「NBAキャリアでそれが最高の業績なのか」と聞かれると、家族思いの一面を覗かせる答えが返ってきた。

「ドラフト指名されたこと、それと祖母の世話ができていることに尽きるね。祖母には毎月400ドル(約6万円)渡している。彼女はそれを400万ドル(約6億円)だと思ってくれているんだ。それがなによりもうれしいね」

 1999年のNBAに彗星のごとく現れ、会場を沸かせるボールハンドリングやパスさばきで幾度も魅了してきたウィリアムズは、"記録よりも記憶に残る選手"の代表例と言っていいはずだ。

【Profile】ジェイソン・ウィリアムス(Jason Williams)/1975年11月18日生まれ、アメリカ・ウェストバージニア州出身。1998年NBAドラフト1巡目7位。
●NBA所属歴:サクラメント・キングス(1998-99〜2000-01)―メンフィス・グリズリーズ(2001-02〜2004-05)―マイアミ・ヒート(2005-06〜2007-08)―オーランド・マジック(2009-10〜2010-11途)―メンフィス・グリズリーズ(2010-11)
●NBA王座1回:2006年/オールルーキー・ファーストチーム(1998)

*所属歴以外のシーズン表記は後年(1979-80=1980)

著者プロフィール

  • 秋山裕之

    秋山裕之 (あきやま・ひろゆき)

    フリーランスライター。東京都出身。NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに転身し、現在は主にNBAのライターとして『バスケットボールキング』、『THE DIGEST』、『ダンクシュート』、『月刊バスケットボール』などへ寄稿している。

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