渡邊雄太、NCAAトーナメント挑戦は
涙で終了。夢の続きはNBAで (3ページ目)
それと同時に、入学時には日常の英会話にも苦心していた留学生が、今季中にチームを引っ張るリーダーの役割を果たすようにもなった。
「自分がエースとしてチームを引っ張っていく大変さを、この1年で学ぶことができた。そういう状況だからこそ、自分を毎日高めることができた。この経験は僕の将来に凄く生きてくることだと思います。将来はどうなるかわからないですけど、今年1年、いや、アメリカに来て5年間の経験がある。これから難しいことが待ち受けていても、それに挑戦する覚悟はもうできているので、自分の将来が楽しみです」
NCAAトーナメントに辿り着けなかった悔しさは消えず、特に最後の7分半をコートにいられなかった悔恨は渡邊をしばらく苦しめるのかもしれない。しかし、渡邊がアメリカで積み上げたものの価値は決して変わらない。
今後、GW の背番号12が敷いたレールを通り、多くの日本人選手が海を渡るだろう。そして、渡邊本人にとっても、カレッジキャリアの終わりは新たなスタートでもある。
「君の前に明るい未来が待ち受けているよ。今後も長くプレーすることになるだろう」
8日のA-10トーナメント終了後、メディア対応する渡邊のそばを通りかかったセントルイス大のトラビス・フォード・ヘッドコーチが、そう声をかけた。
対戦を終えたばかりの敵将の言葉は、単なる社交辞令だったとは思えない。渡邊はカレッジで優れたプレーを続ける過程で、多くの関係者から賞賛を浴び、同時にNBAスカウトからも注目を集めるまでになった。そして、2020年の東京五輪出場へ瀬戸際にいる日本代表からも、参加を待望されている。
カレッジでの日々を終えても、渡邊のバスケットボール人生はまだ始まったばかりだ。幸いにも右足首は重症ではなさそうで、だとすれば、今後の舞台はさらに大きくなる。
今後は、エージェントと契約してNBAチームとの交渉を行なうことになるが、あの"失われた7分半"を取り戻す機会は遠からず訪れるはずだ。そのときには、苦しみ、傷つき、悩み、そして歓喜したGWでの4年間の経験が、渡邊にとって間違いなく大きな糧(かて)になるだろう。
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