【F1】角田裕毅「運命の10月」まで残り2レース フェルスタッペンと「実質0.35秒差」で示した実力の片鱗
F1第18戦シンガポールGPレビュー(後編)
「いったい、どうなってるんだ! なぜだかまったくわからない!」
予選を13位で終えた瞬間、角田裕毅(レッドブル)のずっと抑えていたフラストレーションが、ついに爆発した。
金曜からタイヤのグリップを引き出すのがうまくいかず、サスペンション周りや重量配分などさまざまなセットアップ変更、アウトラップのタイヤの温め方など、ありとあらゆることを模索したものの、予選でもうまくいかなかった。
角田裕毅の2026年は残り2レースで決する photo by BOOZYこの記事に関連する写真を見る Q1ではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と0.546秒差の10位で、黄旗区間でスロットルを戻さざるを得ず0.2秒ほどロスしたことを考えれば、実質的に0.35秒ほどの差であり、十分に競争力のあるラップタイムだった。
スペアパーツ数の都合上、角田は前戦アゼルバイジャンGPと同様に旧型のフロントウイングを使わざるを得なかったものの、それだけで0.3秒や0.5秒の差が生じるわけではない。ドライバー自身の習熟度としても、現時点では0.1〜0.2秒程度の差があるのは、これまでのレースで角田自身も現実として受け止めている。
だから「実質0.35秒」という差は、フロントウイングの違いを差し引きすれば、ドライバーの差としては十分に許容範囲にあるということだ。
しかし、Q2最後の重要な局面ではまったくタイヤのグリップが引き出せず、フェルスタッペンと0.781秒もの差が開いてしまった。
当然ながらこれは、ウイングの差だけでもなければ、ドライバーの差だけでもない。タイヤ本来のグリップを引き出せなければコンマ何秒を簡単にロスしてしまうという、どのチームにもある事象の結果だ。
今回の予選でメルセデスAMGが躍進したのも、マクラーレンやフェラーリが後退したのも、そのタイヤをいかにうまく扱えるかによって変わる、コンマ数秒によるところだ。
「(新型ウイングが使えれば)今週末かなり苦戦している部分の助けにはなると思いますし、そんなに大きな差ではないでしょうけど、差があるのは確かです。でも、セッションによってタイヤの挙動がまったく違っていたり、グリップレベルが全然違っていて、タイヤのグリップを引き出すのにものすごく苦労している状態です。なぜなのかは、わかりません」(角田)
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著者プロフィール
米家峰起 (よねや・みねおき)
F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。



















