有村智恵がラウンドリポーターとして見たセントアンドリュースでの全英女子オープン 印象に残った選手は? (4ページ目)
【インコースに潜むドローヒッターにとっての罠】
――2日目には、同じくアメリカツアーを主戦場とする古江彩佳選手にも同行されていました。
2日目後半のインコースでミスが続いたタイミングがあって、正直、「彩佳ちゃんにもこういうことが起きるんだ」って、ちょっと安心してしまったところもあったんです。
その後、彼女に話を聞いたら、右からの風に少し苦手意識があるみたいで。
確かに、インコースで右からの風が強いと、彩佳ちゃんみたいなドローヒッターは、ティーショットでOBゾーンの上を打っていかなければならないコースが多いんです。それで、(同じくドローヒッターの)ネリーがああやって(3日目の16番ホールで)OBを打ってしまうようなドラマも起きたのかもしれません。
私は(フェードヒッターなので)OBゾーンを超えて打つという発想はありませんでしたが、彩佳ちゃんにとってタフな状況を経ての18番ホールで、このバーディーパットを沈めたら予選通過濃厚、というパットを決めきるところはさすがでした。2メートルから3メートルは残っていた下りのラインなので、簡単ではありませんでしたよね。
――今後、海外の大会で活躍する日本人選手はますます増えていきそうですね。
絶対に増えてくると思います。もちろん、今年は海外メジャーで(笹生優花選手・古江彩佳選手の)2人勝っているっていうのもありますけど、毎回のようにトップ10に日本人選手が入ってくるようになりました。そうやって優勝争いやトップ10に入る選手が増えれば増えるほど、他の選手もみんな「自分もできる」という自信を持てますよね。
私も、海外メジャーに出られるだけでうれしいって思っていた時期もありました。当時は(JLPGAのランキングは現行の)ポイント制(※)じゃありませんでしたから、出場しても(日本の賞金ランキングに)賞金も加算されないので、イチかバチかじゃないですけど、うまくハマればいいな、くらいの気持ちで出場していました。
でも、今は海外メジャーのポイントも国内のランキングに反映されるので、みんなが海外メジャーに勝ちにいく、結果を残しにいく時代になりましたよね。そこでまたいい循環が起こって、(日本人選手同士で)高め合えているのかな、と思います。
※JLPGAは、2022年より翌年のツアー出場権を争うランキングをメルセデス・ポイントによる「メルセデス・ランキング」に一本化。海外メジャーもポイント加算対象となり、かつ国内の公式戦のポイントよりも配分が高いため、日本人選手の海外メジャー挑戦のあと押しとなっている。
次回は10月1日(火)に更新予定
【Profile】有村智恵(ありむら・ちえ)
1987年11月22日生まれ。プロゴルファー。熊本県出身。
10歳からゴルフを始め、九州学院中2年時に日本ジュニア12~14歳の部優勝。3年時に全国中学校選手権を制した。宮城・東北高で東北女子アマ選手権や東北ジュニア選手権、全国高校選手権団体戦などで優勝。2006年のプロテストでトップ合格。2007年は賞金ランク13位で初シードを獲得した。2008年6月のプロミスレディスでツアー初優勝。2013年からは米女子ツアーに主戦場を移した。2016年4月の熊本地震を機に日本ツアーへ復帰。2018年7月のサマンサタバサレディースで6年ぶりの優勝を果たすなど、JLPGAツアー通算14勝(公式戦1勝)をあげる。
2022年に30歳以上の女子プロのためのツアー外競技「LADY GO CUP」も発足させた。
2022年11月に、妊活に専念するためツアー出場の一時休養を表明。2024年4月に双子の男の子を出産した。
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