久野美咲が鈴木央との対談で明かしたアニメ『ライジングインパクト』制作の裏側 主人公の「勝ちたい」気持ちを表現すべく共演者と徹底討論 (3ページ目)
【"勝ちたい気持ち"を徹底的に話し合った「1時間」】
ーー夢を叶えるために「好き」を原動力に努力をすることの大切さが伝わります。久野さんもこの作品と向き合ううえで、そういう気持ちを大事にされたのでしょうか?
久野:まさに「好き」が原動力となってガウェインの演技に臨めたと思うので、本当に楽しかったです。はじめはガウェインの気持ちがあまりわからなかったりもしたんですけど。
鈴木:じつは久野さん、ガウェインの勝ちたい気持ちがわからないと言って、アフレコ中に話し合いの時間があったんです。
久野:後日「どのくらい話し合っていましたっけ?」ってスタッフさんに確認したら、1時間話し合っていたそうです(笑)。事件が起きましたね。
ーーどういうことでしょう?
久野:アニメ第4話のアフレコの時に、これは正直に言わなきゃと、音響監督の小泉紀介さんに「あの、実は......勝ちたいっていう気持ちがわからないんですけど......」ってご相談をしたら、「えっ!?」って大声で驚かれて(笑)。アフレコを急遽中断して、"勝つとはなにか"をテーマに話し合いの時間を設けてくださったんです。
私がなぜこういう疑問を抱いたかというと、4話でガウェインがランスロットに向かって「次はぜってぇおめぇに勝つ!」というようなセリフがあったんですけど、ランスロットに喧嘩を売っているような感覚になってしまって。なんでそんな宣戦布告するような言い方をするんだろうと。
鈴木:ライバルであるふたりが、ゴルフで対決するのをお互いに楽しいと思っているからですよ。
久野:そうなんですよね。今ではガウェインのその気持ちがわかるのですが、その時はハッキリとはわからなくて。私は普段、日常生活でもお仕事をしている時も、勝ち負けとかライバル関係とか、そういう考え方をあまりしたことがなくて。作品づくりも、誰かが嫌な思いや悲しい気持ちにならないように、みんなで楽しく頑張りたい。そういう考え方で毎日過ごしてきたので、ガウェインが抱く「勝ちたい」という思いを100%表現できていないなと思ってしまったんです。なんでそんなに勝ちにこだわるの!?みたいな(笑)。
それでその時、一緒にアフレコに参加していたランスロット役の花守ゆみりちゃんと、小泉祐美子役の本渡楓ちゃん、マーリン・オルブライト役の田中美央さん、そして小泉さんの5人で話し合いました。みんなに言われたのは、やっぱりゴルフという競技は、いちばんにならないと勝てないということが大前提としてあると。勝負というのは喧嘩するわけじゃなくて、相手のことを尊重して、お互い認め合って、そのうえでぶつかり合う。それが楽しいんだよっていうことを教えてくれました。
鈴木:お前がすごい選手だから勝ちたいんだよ、ということですね。
久野:はい。そういう勝負に対する想いというのを、その時に初めて理解して、自分の中でも腑に落ちました。そのあとは、試合のシーンを演じるのも楽しくって仕方なくなりましたね。ものすごく努力して自信をつけて、自分と相手を信じて熱い気持ちでぶつかり合う、その勝負することの意味を、ガウェインを演じることで体感することができました。あの時の話し合いがなければ、ガウェインの気持ちをすべては理解しきれなかったかもしれません。一緒に話し合ってくださった5人と、その話し合いの間に温かく見守ってくださったスタッフさん方には、感謝の気持ちでいっぱいですね。
3 / 4