久野美咲が鈴木央との対談で明かしたアニメ『ライジングインパクト』制作の裏側 主人公の「勝ちたい」気持ちを表現すべく共演者と徹底討論 (2ページ目)
【ガウェインに見る「"おもしー"」が根底にある生き方】
ーーそんなガウェインはもともと才能あふれるキャラクターですが、それでもものすごいスピードで成長していく過程を、久野さんはどのように感じていましたか?
久野:ガウェインは、ショットでとてつもない飛距離を出せる「ライジングインパクト(太陽の光跡)」という"ギフト"を持っていて、まわりの人がワッと驚くような類稀なる才能があります。けど、彼を演じていて思ったのは、どんなにすごい才能があっても、その裏で人知れず積み重ねられる日々の努力や、誰にも負けたくないという強い気持ちがないと、その能力は発揮できないんだなって。
ガウェインは霧亜姉ちゃん(西野霧亜)と出会ってから、手のマメが潰れていることに気づかないぐらい集中して毎日1,000回素振りをしていました。これは誰もができることではありません。その努力ができることも彼の大きな才能のひとつですし、そういったことをひとつも欠かすことなく実行に移せる行動力があるからこそ未来がひらけていけるんだなと。
それから、ガウェインは周りの人たちにも恵まれていました。まず霧亜姉ちゃんと出会わなければゴルフの面白さを知ることはなかったし、おじいちゃんもガウェインの夢を応援してくれたりと、周りに彼の才能を見込んでサポートしてくれる人たちがいてくれたから、輝くことができたんだなって思うんです。
誰と出会い、その人とどんな言葉を交わすか、自分が相手にどんな表情を見せるか、どう行動するかで、その人との関係値は変わっていくんですよね。もちろん相手の心にもよりけりですが、まず自分がどうしたいか、どう関わっていくか、っていうことが大事なんだなって。私はガウェインを演じていてものすごくハッとさせられました。人とのご縁って、人生を豊かにしていくうえで、なくてはならないものだなって改めて実感しましたね。
それから、努力を重ねているのはガウェインだけではありません。ランスロットやリーベルなど、この作品に登場するキャラクターは、みんな本当に頑張っているんです。見ている私たちも頑張ろうと、勇気をもらえますよね。
ーー鈴木央先生は、こうした才能の裏にある努力について、どのような意識を持って描かれたのでしょう?
鈴木:まず、ひとつの物事に対して、理論とか理屈で考えて動く人と、とりあえずやってみるっていう人に分かれると思うんです。僕はどちらかというと後者で、たとえば新しい漫画のネームを持ち込んで編集者にダメ出しされても、めげずに次の作品制作に取り組めるタイプです。
もう少し言うと、長い期間を費やして描き上げた作品の掲載が決まり、もし「頑張ったね」と言われたとしても、僕からすると漫画家は好きでやっていることだから、制作過程に対して自分で頑張ったなとは思いません。
ガウェインもそうで、理論で動いたり理屈を重視するのではなく、とにかくゴルフが好きだから、球を遠くに飛ばすためにひたすら練習する。その好きなことに対するあり方、向き合い方は、彼らキャラクターたちに、競技者としても、ひとりの人間としても求めた部分ではありますね。
久野:アニメの第5話で、ライザー・ホプキンスに、なんでゴルフをやっているのか聞かれた時、ガウェインの「おもしー(面白い)がら」って言うセリフは印象的ですね。
鈴木:やはり、その気持ちがないとなにもできなくなってしまうと思うので。
久野:ワクワクした気持ちのまま動いているのがガウェインで、とにかくゴルフが楽しいし、みんなと勝負するのが楽しい。それこそ、1,000回の素振りも苦じゃないんですよ。彼にとっては楽しいからやっているだけで、努力を続けることを苦としない。「楽しい」が根底にある生き方をしているから、こんなに輝いているんだなって思いますね。
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