セレソン新監督はどうなる? キラ星のような候補者リストも、そこにブラジル人の名はなし
3月に行なわれたW杯南米予選で、ブラジル代表は長年のライバル、アルゼンチンに4対1で敗れた。これはブラジルのW杯予選史上最悪の敗北であり、ブラジル人サポーターの心に、強く、忘れがたい痛みを残した。
この痛みは、苦悩と怒りが混ざり合ってできている。今、セレソン(ブラジル代表)は、アイデンティティも行く先も見失い、さまよっている。試合のたびに、ブラジルサッカーの誇りが踏みにじられていると、人々は感じている。ヨーロッパの強豪ではなく、10カ国ばかりのラテンアメリカ勢を相手にして屈辱的な試合が続く限り、この状況は終わりそうにない。
ブラジルは現在、2026年W杯南米予選で4位につけているが、3位のウルグアイ、5位のパラグアイとは勝ち点が同じ。6位のコロンビアとはたった1ポイント差だ。もしこれまでどおり南米から4.5チームしか出場できない大会だったら、本戦出場も危ぶまれる順位だ。悲しいかな首位のアルゼンチンには勝ち点で10もの差をつけられている。まぎれもなくブラジル史上、最も苦戦しているW杯予選のひとつだ。
悲惨な状況に追い打ちをかけるかのように、アルゼンチン戦の責任を追及されドリヴァル・ジュニオールが代表監督の座を追われた。カタールW杯で敗退してチッチ監督が辞任して以来、セレソンの監督は目まぐるしく変わっている。ラモン・メネゼス、フェルナンド・ディニス、そしてドリヴァル・ジュニオール。3年足らずで3人目だった。
現在、監督の座は空白、6月5日と10日に予定されているエクアドル戦、パラグアイ戦で誰がベンチに座ることになるのかも、見当がつかない状態だ。
優秀な選手がいないわけではない。チャンピオンズリーグ(CL)で得点王を争い、今年のバロンドール最有力候補と言われるラフィーニャ(バルセロナ)を筆頭に、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ(ともにレアル・マドリード)......。浮き沈みはあるものの、それぞれのクラブでは輝きを放っている。
だが彼らも、いったんカナリア色のユニホームを纏うと、自信を失い、恐れを抱き、持てる能力を存分に発揮できなくなってしまう。代表での失敗を重ね、サポーターやメディアの怒りに触れるたびに、恐怖は増大し、プレーは委縮してしまう。まさに悪循環だ。
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