マンチェスター・ユナイテッドに巻き返しの兆し カギはブルーノ・フェルナンデス (3ページ目)
【知と血を結ぶキャプテン】
キャプテンにもいろいろなタイプがいる。ユナイテッドに調整型は稀で、ほとんどは率先垂範のリーダーだ。
1982年から12年間もキャプテンを務めたブライアン・ロブソンはブルーノ・フェルナンデスと似ていて、高い技術とフィールドの端から端まで走りきるガッツを持つリーダー。フィールド外でも飲み会の中心だった。
イングランドのフットボールと酒はセットだった。アレックス・ファーガソン監督が廃止するまでは根強い習慣で、現在では考えられないけれども、ロブソンはキャプテンらしいキャプテンだったわけだ。
1シーズンだけだが、エリック・カントナもユナイテッドらしいキャプテン。ファーガソン監督さえアンタッチャブルな存在感と誰にも真似できないプレーは別格だった。
その後のロイ・キーンは無類のファイター。クラブへの愛着と勝負への執念、チームメートへの当たりの強さも激烈で、現在の基準からするとパワハラの権化のようなのだが、不可欠のキャプテンだった。
聖人君子はいなくて、ほぼ奇人変人に近い面々ばかり。ブルーノ・フェルナンデスがむしろ大人しくみえるくらいなのだが、理知の塊みたいなアモリムと暴走系のDNAを持つチームの接着剤としてこれほど相応しい人物もいないだろう。
今季のプレミアリーグでは第33節終了時点でユナイテッドは14位。アモリム監督への批判も頂点に達していたが、リヨン戦のドラマチックな勝利で潮目は変わるかもしれない。
強烈な個をどう連結させるかで迷走していた。アモリムはそこに明確な形を与えたが、一方で魂が抜けそうになっていた。ここにきてようやくバランスを見出したのではないか。
著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。
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