プレミアリーグを追放されたグリーンウッドが復活 鬼才デ・ゼルビ監督が能力を引き出す (3ページ目)
【表芸と裏芸】
一芸主義でそればかりなら、対応は簡単そうだ。だが実はそうでもない。
リオネル・メッシの、左足アウトサイドを使ったカットインの威力を知らない者はない。しかし、止めるのは至難だ。
カットインからのシュート、パスという表芸があまりに強力なので、結果的にそればりになっているが、実は左前へ進む以上に右方向へ抜くのもうまい。というより、メッシのドリブルは、相手の重心を見て反対へ運ぶ後出し型なのだ。
相手が多少警戒したところで、カットインが可能なだけの技量があったので表芸が際立っていたが、さらに警戒を強めたら簡単に右へ抜くことができる。圧倒的な技量のせいで表芸が目立っているだけで、裏芸の縦突破は完全に逆をとっている分より鮮やかだった。
本当にひとつしかなければ、いずれは対応される。トッププロの世界はそんなに甘くない。なかにはスタンレー・マシューズやガリンシャみたいに一芸でほぼずっと通用してしまった猛者もいるが、普通はやがて行き詰まる。
ただ、表が際立っていれば、裏がそこまででなくても通用しやすくなる。グリーンウッドは隠しているわけではないけれども右足も相当使えるので、カットインしかないと思ってくれたほうがたぶん好都合だろう。
デ・ゼルビ監督の戦術がグリーンウッドの一芸を引き出した。グリーンウッドに依存した攻撃とも言える。ただ、おそらく後半戦からは印象づけた表芸の裏が活きてくるのではないか。
著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。
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