【F1】角田裕毅のモナコGP決勝1週目ピットインは裏目に なぜレッドブルはそんな戦略を採ったのか
F1第8戦モナコGPレビュー(後編)
12番グリッドから臨むモナコGPの決勝に、大きな望みなど持てない──。そのことは角田裕毅(レッドブル)にも、よくわかっていた。
今年は2ストップ作戦(3セット以上・複数仕様のタイヤを使うこと)が義務づけられ、昨年よりはレースに動きが出る余地はある。とはいえ、1回のピットストップで入れ替わるポジションには限りがあり、なおかつ角田の前にはレーシングブルズ勢とウイリアムズ勢がいて、彼らが「チームプレー」を展開することは明らかだった。
角田裕毅は1週目ピットインという行動に出たものの...... photo by BOOZYこの記事に関連する写真を見る 昨年までのモナコでもよく見られたように、意図的にペースを落として後続を抑え込み、チームメイトのために20秒のギャップを作り出してポジションを落とすことなくピットストップを可能にするという「モナコならでは」の戦略だ。
ホンダの現場運営責任者である折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーは、チームとしてどうすることもできなかったと悔やむ。
「チームプレイは、レーシングブルズは間違いなくやってくるんじゃないかと予想していましたけど、ほかのチームも見事にやってきたのでビックリしました。
決勝に向けた作戦を話し合うミーティングでも『(リアム・)ローソンがカギだよね』というのはチームのなかでしていました。だが、誰かがピットインすればまた次の人がいて、という状況で、裕毅にとってはノーチャンスな状況になってしまいました」
1周目にソフトタイヤを捨ててハードに履き替えた角田は、すぐに前の集団に追いついてランス・ストロール(アストンマーティン)の背後を走行。彼がピットインしてからは、メルセデスAMG勢の後ろを延々と70周目まで走り続けることになった。
12位の位置を維持したままセーフティカーや赤旗のチャンスを待つという戦略や、マックス・フェルスタッペンのようにハードタイヤでスタートして周囲がピットインしたところでひとまず前に出るという戦略もあったが、角田は自ら動く戦略を選んだ。
結果的に、それは裏目に出た。しかし、セーフティカーや赤旗の確率が高いことを考えれば、それも決して間違いではなかった。
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著者プロフィール
米家峰起 (よねや・みねおき)
F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。