プレミアリーグを追放されたグリーンウッドが復活 鬼才デ・ゼルビ監督が能力を引き出す (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【右サイドからのカットイン 一芸で通せている現状】

 グリーンウッドのポジションは、4-2-3-1システムの右サイドハーフだ。

 本人は両足利きと話しているが、マルセイユでのプレーを見る限りは左利きそのもの。右サイドからカットインしての左足のシュートが十八番となっている。シュートだけでなくラストパスもこの形から繰り出されていて、その点ではカットインからの左足という一芸で勝負している感さえある。

 ドリブルのテクニックは多彩。シザースが得意で、時々はルーレットも披露する。ダブルタッチもうまい。トレードマークの左足アウトでのカットインは瞬間的なキレがあり、相手DFはわかっていてもなかなか阻止できない。

 得点のほとんどはドリブルシュート。芯を食ったシュートをゴール隅へ正確に蹴り込む能力が抜群だ。右足も左と遜色なく使えるし、一発で端から端まで飛ばせるサイドチェンジや左足アウトのクロスボールなど、キックの強さと精度、幅の広さがすばらしい。

 能力的には多彩なのだが、右からのカットインに特化しているのは、それ以外のプレーをする必要があまりないからだ。

 マルセイユの、というよりデ・ゼルビ監督のサッカーの大きな特徴が、オートマチック化した擬似カウンターである。

 ボール保持率が高いのは、後方でのパスが多いからだ。後方でじっくり保持し、相手が食いついてきたら縦パスを差し込む。縦へボールを出した時にはカウンターアタック同様の状況になっていて、スペースは十分。

 グリーンウッドは右サイドに張っていて、パスを受けたら前向きに仕掛けていく。スペースがあればひとりでシュートまでいける力があり、実際打てば高確率で枠へ飛ばせる。この一芸で完結できる。

 一方で、後方のキープで相手を十分に食いつかせてから前進するので、敵陣に攻め込む回数自体は限定的。攻め込んだ時は明確にチャンスになるけれども、回数は多くない。

 しかし、第8節のモンペリエ戦は保持率67%でシュートも18本だった。そのうち11本は枠内。スコアは5-0。おそらくこれが目指しているサッカーなのだと思う。

 モンペリエ戦は相手が後半に退場者を出している事情はあったが、ナント戦(第10節)も保持率75%でシュート8本、オセール戦(第11節)も74%で12本だった。スコアはナントに2-1、オセールに1-3と結果は違っているが、内容的には理想に近づいているのではないかと思われる。

 さすがにグリーンウッドの得意技も対戦相手から警戒されるだろうから、得点ペースも落ちていくかもしれない。ただ、前進の回数が増えていけば、潜在的に持っている多彩なプレーが引き出されていく可能性がありそうだ。

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