アレッサンドロ・ネスタこそCBの完成形 ファーディナンドも絶賛「学ぶべきプレーが山ほど」
世界に魔法をかけたフットボール・ヒーローズ
【第12回】アレッサンドロ・ネスタ(イタリア)
サッカーシーンには突如として、たったひとつのプレーでファンの心を鷲掴みにする選手が現れる。選ばれし者にしかできない「魔法をかけた」瞬間だ。世界を魅了した古今東西のフットボール・ヒーローたちを、『ワールドサッカーダイジェスト』初代編集長の粕谷秀樹氏が紹介する。
第12回は連載初のディフェンダーとして、イタリア代表のアレッサンドロ・ネスタを紹介する。守備を芸術の域にまで昇華したミランの名DFは、もっと語り継がれるべき存在だ。
※ ※ ※ ※ ※
アレッサンドロ・ネスタ/1976年3月19日生まれ、イタリア・ローマ出身 photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 1980年代後期に花開き、永遠に続くかと思われたカルチョ・イタリアーノの栄華が、1990年代中期に入ると緩やかな下降線を描き始める。放映権バブルの崩壊や八百長工作の火種がくすぶり始め、プレミアリーグの急速な台頭も目障りだった。
それでも、パルマのエルナン・クレスポとエンリコ・キエーザ、フィオレンティーナのガブリエル・バティストゥータ、インテルのロナウド、ミランのアンドリー・シェフチェンコなど、超一流のストライカーがハイレベルな得点感覚に磨きをかけていた時代でもある。
そんな彼らが、こぞってひとりのDFを高く評価していた。
アレッサンドロ・ネスタである。
空中戦、1対1に優れ、しなやかでパワフルなタックルは一撃必殺。また、スピードにも秀でていたため、快足ウイングですら、いとも簡単に封じ込めた。なおかつ、丁寧なフィードが攻撃の起点となるケースもしばしばあった。
これといった欠点のないDFであり、近代フットボールでも十二分に通用すると筆者は堅く信じている。戦略・戦術の理解度も高く、3バックも4バックも難なくこなしたワールドクラスのDFだ。
ラツィオでプロデビューした1993年から、いや、下部組織で研鑽を積んでいた1980年代中期から、ネスタは注目されていた。ミラン、インテル、ユベントスといったライバルが何度となく引き抜きを図った事実が、この男のポテンシャルを証明している。
1 / 4
著者プロフィール
粕谷秀樹 (かすや・ひでき)
1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年
、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、 海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム 、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出 版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン 社)など多数。