Jリーグの無料招待客はリピータ―になるか 問われるのは「第三者」を満足させる試合の質
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連載第39回
杉山茂樹の「看過できない」
Jリーグが施策として積極的に実施している無料招待キャンペーン。今年のゴールデンウィークには17万枚が配布された。国立競技場で行なわれる試合が最も招待の人数が多く、4月に開催された4試合、5月に開催される4試合を対象に、各試合1万枚、計8万枚が抽選を経て招待される。
ほかの試合がどちらかの本拠地で行なわれるのに対し、国立競技場は中立地だ。どちらがホーム扱いになるかは試合ごとに決まっているが、応募者がホームチーム、アウェーチームいずれかのファンであるとは限らない。東京のど真ん中という場所柄を考えると、第三者である可能性が高いと考えるのが自然だ。代表戦に足を運ぶ日本代表ファンに近い層と言うべきだろう。
国立競技場に5万人以上の観客を集めて行なわれた清水エスパルス対名古屋グランパス戦 photo by Yamazoe Toshio 以下が、これまで行なわれた6試合とこれから行なわれる2試合だ(カッコ内は観客数)。
4月6日/ヴィッセル神戸対アルビレックス新潟(3万6407人)
4月11日/FC東京対柏レイソル(4万3813人)
4月13日/FC町田ゼルビア対浦和レッズ(4万4363人)
4月25日/FC東京対ガンバ大阪(4万4519人)
5月3日/清水エスパルス対名古屋グランパス(5万2847人)
5月6日/ジェフユナイテッド千葉対RB大宮アルディージャ(4万9991人)
5月11日/鹿島アントラーズ対川崎フロンターレ
5月25日/FC東京対サンフレッチェ広島
国立で清水対名古屋の試合が行なわれた5月3日は、J1からJ2まで計28試合が開催され、計42万416人の観衆を集めた。従来の記録は昨年の同日(5月3日)に集めた38万1296人だという。記録を4万人近く更新したと、各メディアは、Jリーグの代弁者のように無邪気に報じた。
だが昨年のこの日、国立競技場で試合は行なわれていない。記録更新にはからくりがあった。国立競技場で試合があったか否かの差だ。清水対名古屋が清水の本拠地IAIスタジアム日本平(2万248人収容)で行なわれていれば、記録が更新されたかどうか微妙である。国立競技場で試合を行なえば観客数は伸びるに決まっている。当たり前の話を記録更新と大喜びする姿は能天気。疑問を覚えずにはいられない。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。