「引退」への気持ちが固まっていた34歳・元日本代表MFの考えを一変させた家族の言葉「心の炎が燃え上がった」
ベテランプレーヤーの矜持
~彼らが「現役」にこだわるワケ(2025年版)
第3回:山田直輝(FC岐阜)/前編
今季からFC岐阜に加入した山田直輝この記事に関連する写真を見る 湘南ベルマーレで過ごした2024シーズン終盤。山田直輝(34歳)の頭のなかには確かに「引退」のふた文字が浮かんでいた。
「8~9割方、気持ちは固まっていました」
2019年に「自分を再生してくれたチーム」である湘南に復帰して6シーズン目。毎年のように残留争いに巻き込まれながらも、それを含めて湘南でのプレーを楽しんできたが、このシーズンだけは、それまでとは違う息苦しさを覚えるようになっていたという。
「ああ、引退する時が来たんだな」
だが、家族にその思いを告げた際に返ってきた言葉が、山田の考えを一変させる。
「パパ、サッカー選手じゃなくなっちゃうの?」
娘からの真っ直ぐな問いかけに言葉を詰まらせていたら、さらに妻の言葉が追いかけてきた。
「大好きで始めたサッカーを、もう少し、楽しんでやってもいいんじゃないの?」
そのふたつの言葉は、消えかけていたサッカーへの情熱を再燃させる。それがFC岐阜でのキャリア続行につながった。
◆ ◆ ◆
FC岐阜に取材に訪れた5月の半ば。山田直輝はフィジカルトレーナーとともに、個別のトレーニングに向き合っていた。
「そもそも僕は、若い頃からケガが多かったので、年齢が上がるほどケガが増えるという感覚にはなったことがないですけど、20代前半と今の体が違うのは明らかなので。そう考えても『40歳をすぎて現役を続けている選手は、バケモンだな』と(笑)。30代半ばになった今だからより、そう思います。僕も早くみんなとサッカーがしたいです」
表情は明るい。インタビューが始まってからも、岐阜での新たなチャレンジに胸を躍らせているのが伝わってくるような、言葉が続く。
「妻や娘の言葉を聞いて『このまま終わったら後悔するな』って思った瞬間に、消えかかっていた心の炎が、自分でもびっくりするくらい、今までにないほど、燃え上がったんです。そしたら今度は、一気に『現役を続けたい!』って思いが強くなって。そのタイミングで、岐阜に声を掛けてもらったこともあり、『やるぞ!』という気持ちになった。
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