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FC町田ゼルビアのドレシェヴィッチが振り返るストリートサッカー「相手を欺くテクニックや駆け引きも習得」 (3ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi

【自身のルーツの代表を選択】

 生まれつき多様な背景を持つドレシェヴィッチにとって、新しい土地やチームへの適応は、さほど難しいことではないのかもしれない。幼少期に親しんだ遊びが職業となり、それによって世界各地で生活できていることは、すばらしい人生と言えるが、そのためにはフットボールの才能だけでなく、向上心や自信、モチベーションが欠かせなかったはずだ。彼がそれらも高く備えていたのは、出生国ではなく、ルーツの代表を選択したことからも推測できる。

「スウェーデンのアンダー世代の代表でプレーしていたけど、A代表からはなかなか声がかからなかった。その頃の僕は、オランダのヘーレンフェーンでレギュラーとなり、毎週のように高いパフォーマンスを披露していたというのにね。僕はとにかく代表チームでプレーすることを目指していたので、スウェーデンが興味を示してこないのであれば、ほかの可能性を探ろうと思い、コソボ代表からの要請に応じたんだ」

 コソボの住民の大多数はアルバニア人で、彼の父のルーツを辿ってコソボ代表にデビューした。前述したように、同代表の一員としてイングランドやスペイン、そして出生国スウェーデンらと対戦してきた。最近では日本でも他国にルーツを持つ子どもが少しずつ増え、トップレベルのスポーツのシーンで台頭している選手もいる。極東の島国でも、徐々に多様な社会が広がりつつある。

 ただし、宗教上の理由で大きなハンディキャップ――少なくとも外部からはそう見える――を負って、第一線で活躍している選手の存在については、それほど知られていないだろう。ドレシェヴィッチもそのひとりだ。

つづく(4月12日掲載)>>

ドレシェヴィッチ 
Ibrahim Drecevic/1997年1月24日生まれ。スウェーデン・リッラ・エデット出身。エルフスボリのユースチームから2016年にトップチームへ。2019年にオランダのフェーレンヘーンへ移籍して活躍。2022年からはトルコのファティ・カラギュムリュクで2シーズンプレー。2024年からFC町田ゼルビアでプレーしている。ユース年代ではスウェーデン代表を選択していたが、A代表では2019年にコソボ代表でのプレーを選んだ。

著者プロフィール

  • 井川洋一

    井川洋一 (いがわ・よういち)

    スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

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