FC町田ゼルビアのドレシェヴィッチの断食期間の生活リズムとは シーズン中でも「すっかり慣れた」
FC町田ゼルビア ドレシェヴィッチ インタビュー 後編
FC町田ゼルビアDFドレシェヴィッチのインタビュー最終回。ムスリムの彼は1年に一回、ひと月の断食期間を過ごしている。練習の日でも試合の日でも、日中は飲まず食わずというが、本人がその内容を明かしてくれた。
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ムスリムのFC町田ゼルビア・ドレシェヴィッチ。シーズン中の断食期間の過ごし方を明かしてくれた photo by Kishiku Toraoこの記事に関連する写真を見る
【日中は何も飲まず、食べない】
「練習後に選手がインタビューに臨む時、いつもクラブのスタッフが水を用意してくるんだけど、今回はそれがなかったので、あれ? なんでだろう、と思っていたんだよね」
このシリーズの写真を担当するフォトグラファーは、取材後にそう明かした。さすが長年、様々な瞬間を切り取り続けてきたベテランカメラマンは、物事をよく見ている。
取材と執筆を担う筆者といえば、インタビューも後半になった頃に食事の話になり、ようやくイブラヒム・ドレシェヴィッチが水を飲んでいないことに気がついた。彼はイスラム教の信者で、その信仰には食事制限と断食があり、このインタビューをした時がまさに、今年のラマダン(断食期間)だったのだ。
期間中、イスラム教徒は日出から日没まで、食料も水分も控えることになる。信者によっては日中に水分だけ補給する人もいるようだが、敬虔で誇り高きムスリムであるドレシェヴィッチは、忠実にこれを守っている。3月下旬の当日は、いきなり夏が訪れたような暑さで、激しいトレーニングを水も飲まずに終えたわけだ。
「ちょうど今が断食期間で、あと3日、これを続けるんだ」とドレシェヴィッチは涼しい顔で言った。
「期間は毎年、太陽暦では異なるけど、大体ひと月にわたる。今年はあと3日間だね。その間は朝の4時頃に朝食を食べ、夕方6時くらいまで何も飲まず、何も食べない。練習中に喉が渇いても、水を口に含むだけで、飲み込むことはなく吐き出す。どれだけ厳しいトレーニングだろうと、強豪との激しい試合だろうと、日中であればそうしている」
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著者プロフィール
井川洋一 (いがわ・よういち)
スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。