今季J2のおススメ注目チームをサッカーマニア平畠啓史が語る 首位町田の強さから残留争いをするチームまで (4ページ目)

  • 池田タツ●取材・文 text by Ikeda Tatsu
  • photo by Getty Images

【気になる残留争い。どのチームも変わる可能性十分】

 現在は大宮アルディージャが非常に厳しい状況になっています。大宮は、まず選手の個々の持っているポテンシャルを考えると、そこ(下位)にいるべきチームではないと思うんです。何かのきっかけで変わる可能性を十分持っている。どういう形で盛り返してくるか、なにがきっかけになるかはわからない。チームが変われた時、ポテンシャルは高いので一気に行く可能性があるかなと。

 レノファ山口FCは、ファン・エスナイデル監督を呼びました。極端に高いDFラインを敷く戦術などリスクがあるという意見もあるかもしれませんが、僕はそういうチャレンジはいいなって思っています。山口のスタジアムの横断幕に「諸君、狂いたまえ」って書いてありますよね。吉田松陰の言葉ですが、やっぱり山口というクラブはそういうクラブなんちゃうかと。

 サッカーで勝つためのやり方、上位に行くためのやり方って定番なものがあるかもしれないけど、「いや、そこは常識にとらわれんと、なんかもっと一歩越えて行きましょうよ」っていう、そういうスピリットみたいなのが、もしかしたら山口の人にあるのかなって。で、その考え方にファン・エスナイデル監督って合っていると思うんですよ。

 それもあってか矢島慎也選手のプレーも前向きになってきているし、河野孝汰選手など選手たちのパフォーマンスが上がってきている。残留争いはもちろん目の前に迫っている問題なんですけど、そこにとらわれすぎずもっと先のことまで考えてチームを作っていくほうが大事なんじゃないかと思います。

 いわきFCは、J3の時に実況していて試合も生でたくさん見てきました。だからこの前、岩渕弘人選手が帰ってきて、大宮戦でゴールを決めたのに僕は涙しましたよ。J3で本当に大活躍した選手で、でもリーグの終盤で大きなケガをしてしまい、ようやく戻ってこられた。こういうドラマはチームを加速させるかもしれない。

 いわきはJ3で圧倒的に勝ってJ2に上がったことで、周りの期待感もあって、ちょっとよそ行きになってしまったところはあったのかもしれません。なんか襟付きのアンダーアーマーを探してしまったのかなって。いつものピチピチのアンダーアーマーでええやんみたいな。そんな感じを大宮戦で掴めていたのかなと。やっぱりそれは前のいわきを知っている田村雄三監督になったのも大きいと思います。

 大宮戦(第22節)できっかけを掴んだとはいえ、一筋縄でいかないのがJ2。相手も対策してきます。いわきのサッカーがさらに上に行くためには、それを上回っていけるかどうか。いわきのやり方をブラッシュアップしていくのか、もしくは別の作戦を考えるのか。そこはひとつ大事なポイントになりそうです。

 栃木SCは、ちょっと無骨感が残ってるところが好きなんですね。器用じゃない感じが僕は大好き。もうちょっとスマートにやろうとしたらできるけど、でもそういうことじゃなくて泥臭くやってしまうというか。栃木の予算規模とか選手たちを考えたら、泥臭いやり方こそが生き残る道の一つなんだろうなとは思うし、39歳の矢野貴章さんにあれだけ走られたら、そら周りは走らないわけには行かないですよね。

 矢野貴章選手もう550試合ですよ。今でも本当に走る。さらに福森健太選手、西谷優希選手、佐藤祥選手もめちゃくちゃ走る。前線には宮崎鴻選手と根本凌選手と、体を張れる泥臭い栃木らしいFWがいる。だからこそ栃木らしいやり方でいってほしいですね。

平畠啓史 
ひらはた・けいじ/1968年8月14日生まれ。大阪府出身。芸能界随一のサッカー通として知られ、サッカー愛溢れる語り口が人気で、多くのサッカー関連番組に出演中。『平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020 日本全国56人に会ってきた』(ヨシモトブックス)など、サッカー関連の著書も多い。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る