オシムに激怒された坂本將貴の回顧。翌日告げられた言葉で真意を知った (5ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 決勝は120分を戦い終えてもスコアが動かず、PK戦に突入した。ガンバのひとり目のキッカー、遠藤保仁のキックをGK立石智紀がセーブし、ジェフの5人目のキッカー、巻誠一郎のキックが決まった瞬間、ジェフの初戴冠が決まった。

 坂本はこのPK戦をベンチから眺めていた。途中交代したわけではない。120分間、ピッチに立っていたにもかかわらず、だ。

「ガンバの選手が負傷で抜けたから、PK戦では人数を合わせるために、うちもひとり外れないといけなかった。僕はそのルールを知らなかったんですけど、オシムさんが『私はロッカーに戻るから、サカ、お前もベンチに戻れ』って」

 オシムは、ユーゴスラビア代表を率いた1990年イタリアW杯のベスト8でアルゼンチンにPK戦で敗れて以来、自チームのPK を見ないことを習慣にしていた。

「なぜ自分だったのかは、聞いてないですね。せめてピッチにいさせてほしかったですけど(苦笑)。でも、優勝できたのは嬉しかったし、次はリーグ戦で優勝したいという気持ちが強まりました。オシムさんも『カップ戦の優勝より、リーグ戦優勝のほうが意味がある』ってずっと言っていましたから」

 坂本にとって、この決勝と同じくらい印象に残っているのが、同じ2005年シーズンの最終節、名古屋グランパスとの一戦である。

 1シーズン制となったこの年、ジェフは最終節を迎えた時点で、首位のセレッソ大阪と勝ち点2差の5位につけており、逆転優勝の可能性を残していた。

 運命の一戦は81分に先制を許したものの、89分に阿部勇樹がPKを決めて土壇場で追いついた。だが、ドラマはそこで終わらない。アディショナルタイムに坂本が決勝ゴールを決めるのだ。

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