オシムと出会って人生が変わった。坂本將貴が大切にする2つの助言

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi
  • photo by 新井賢一/AFLO

「オシムの教え」を受け継ぐ者たち(2)
坂本將貴 後編 前編から読む>>

 今から18年前、ジェフユナイテッド市原(現千葉)の監督に、大柄なボスニア人指揮官が着任した。彼の名は、イビチャ・オシム――。1990年イタリアW杯でユーゴスラビア代表をベスト8へと導いた知将だった。

 鋭いプレッシングと、後方から選手が次々と飛び出していくアタッキングサッカーで旋風を巻き起こした"オシム・ジェフ"は、瞬く間に強豪チームへと変貌を遂げる。のちに日本代表監督も務めた指揮官は、ジェフの何を変えたのか。その教えは、ともに戦った男たちの人生にどんな影響を与えたのか。「日本人らしいサッカー」を掲げた名将の薫陶を受けた"オシムチルドレン"やスタッフたちに、2022年カタールW杯前年のいま、あらためて話を聞いた。

 第2回は、前回に続きジェフでオシムの指導を受けた坂本將貴が、現役時代のサッカー人生のターニングポイントを振り返った。

2006年7月から2007年11月まで日本代表監督を務めたオシム氏2006年7月から2007年11月まで日本代表監督を務めたオシム氏***

 次期日本代表監督としてイビチャ・オシムの名前が挙がった2006年7月上旬、坂本將貴は岐阜県の飛騨にいた。ドイツW杯期間中だったため、ジェフ千葉はかの地でキャンプを張っていたのだ。

「(ジェフに)残ってほしいという気持ちもありましたけど、代表監督になることに納得というか、オシムさんだったら日本代表をよくしてくれるだろうなって。ただ、実際に就任が発表されたあと、オシムさんから『俺が代表監督になるからといって、代表に呼ばれると思うなよ』と言われました(笑)。それはすごく覚えていますね」

 むろん、オシム門下生だからといって日本代表に選ばれるほど甘い世界でないことを坂本は理解していた。自分がまだ、そのレベルにないということも認識していた。

 だが、そのレベルに達し、いつか自分も日本代表になりたい、という野心ははっきりと胸に持っていた。

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