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「横浜F・マリノスを任せて大丈夫」な監督はどこに? その惨状が象徴する人材不足という病

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

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連載第47回
杉山茂樹の「看過できない」

 4月2日、横浜F・マリノスは名古屋グランパスに敗れ、16位から降格圏である19位に順位を下げた。すると4月18日、スティーブ・ホランド監督を解任。後任にはそれまでヘッドコーチを務めていたパトリック・キスノーボが就いた。ところが成績は改善されるどころか、悪化の一途を辿った。最下位(20位)に転落し、残留ライン(17位)との勝ち点差も離れていった。すると6月18日、フロントはキスノーボを解任。大島秀夫氏を今季3人目の監督に据えた。

 大島新監督はキスノーボ監督時代にはヘッドコーチを、ホランド監督時代にはアシスタントコーチを務めていた人物である。当初、チーム内の序列で3番手だった指導者にJ1残留のミッションを託す横浜FM。怒り渦巻くファンは留飲を下げることができるか。怪しい限りだ。

J1リーグ最下位の横浜F・マリノスの指揮を執る大島秀夫新監督 photo by Fujita MasatoJ1リーグ最下位の横浜F・マリノスの指揮を執る大島秀夫新監督 photo by Fujita Masato 昨季はハリー・キューウェルを監督に迎えたが、7月に順位を13位まで下げると解任。ヘッドコーチのジョン・ハッチンソンを昇格させた。今季を迎えるにあたりそのハッチンソンに代えて、ホランド監督を招聘したわけだが、迷走は止まらなかった。つまり横浜FMはこれで1年半の間に4人の監督の首をすげ替えたことになる。

 横浜FMといえば、2015年にエリク・モンバエルツを迎えて以来、監督は外国人と決まっていた。モンバエルツはともかく、アンジェ・ポステコグルー、ケヴィン・マスカットは攻撃的だった。代表チームより見栄えのいいサッカーで日本サッカーを牽引。川崎フロンターレとともに一時代を築いた。

 そこからの転落だ。横浜FMのフロントはスキノーボの後任に、昨季までサガン鳥栖の監督を2シーズン半務めた川井健太氏を招聘するも、固辞された経緯があると聞く。しかし川井氏はJ2に降格した鳥栖の前監督である。つい2シーズン前までJリーグの盟主のような存在だった横浜FMに相応しい実績の持ち主なのか。格的に釣り合いが取れた適任者かと言えば、疑問が残る。

 だが、それでは現在、「監督浪人をしている優秀な人材がほかにいるのか」と突っ込まれると、言葉に窮するのも事実だ。川井氏以外に候補がいないという現実。大袈裟に言えば、森保一日本代表監督を批判しても、「代わりは誰がいいのか」と突っ込まれることと同じだ。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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