「異端」の矢板中央がベスト4進出。前時代的スタイルの凄みを発揮した (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 殊勲の背番号8は、試合後しばらく時間が経ったあとでも、興奮冷めやらぬといった様子で語る。

「何も考えず、ドリブルも感覚でやっている。気がついたらゴールに入っていた。(県予選以来のFW起用だったが)抵抗はなく、久しぶりだったので燃えていた」

 敗れた富山第一の大塚一朗監督は、「いくつかあったチャンスで決め切れていたら、違う結果になったのではないか。後半、サイド攻撃のときに横パスを狙われ(奪われ)、縦への一本のパスでやられた。注意していただけに残念だった」と悔しがったが、敵将のコメントには、矢板中央の強さの秘密が端的に示されていると言っていい。

 矢板中央は、1試合を通じて主導権を握り続けたわけではなかったが、気がつけば2点をリード。試合終盤は、焦りの見える富山第一の攻撃を難なくはじき返し、試合終了のホイッスルを聞いた。

 とはいえ、矢板中央にとって、本当の勝負はこれからである。

 過去3度ベスト4に進出しながら、準決勝では一度も勝っていない。昨年度の大会でも優勝した静岡学園と対戦し、30本近いシュートを浴びながらも無失点でしのいでいたが、後半ロスタイムに痛恨のPKを与え、0-1で敗れている。

 1年前の準決勝にも先発出場していた坂本は、「去年の悔しさは今でも持っている」と語り、リベンジを期す。

「自分たちが目指す日本一に近づいているのでうれしさはあるが、去年静学に負けた(埼玉スタジアムの)ピッチには、思い入れもあるし、悔しさもある。あとふたつ勝つために気を緩めず、次も勝って日本一を取れるようにがんばりたい」

 これまで準決勝の壁にはね返されること3度。矢板中央は3度目の正直ならぬ、4度目の正直を成し遂げることができるのだろうか。

 異端の挑戦は、まもなくクライマックスを迎える。

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