山梨学院が「昌平対策」を実行。指揮官が明かしたその手の内とは?
今年度の高校サッカー選手権大会は、サッカー部員、保護者、学校関係者以外は観戦できない"無観客"に近い状態で行なわれている。(準決勝からは完全無観客となった)。観戦者はマスクをし、大声を発するのは禁止。客席からの声や応援は皆無である。
山梨学院は久保(20番)が決めた先制点を、見事な守備で守り切り昌平に勝利。ベスト4へ進出した 静寂のなかで行なわれるサッカーは味気ないものだが、それゆえに通常とは違った発見がある。それが監督の指示だ。本来ならば、声援やブラスバンドの演奏によってかき消されるベンチからの指示が、はっきりと記者席まで届いてくる。
準々決勝の山梨学院(山梨)対昌平(埼玉)戦。山梨学院・長谷川大監督の指示と激励が、80分間ピッチに響き渡っていた。たとえば、こんな具合である。
「(ボールを)取られたあとのことを考えろ」
「(攻撃は)サイドから行け」
「(昌平の)7(小川優介)と6(柴圭汰)がフリーで持った時は11(小見洋太)を見ろよ」
「コンパクトに!」
「ワンタッチで背後を突け! 久保(壮輝)、出ろ!」
これは前半のほんの一部にすぎないが、長谷川監督の指示を聞いていると、チームの狙いがはっきりわかる。そして、選手たちは忠実に実行していた。
なにより、セットプレーから先制点を奪えたのが大きかった。前半7分、左サイドからのフリーキックを野田武瑠がファーサイドに蹴り込み、一瀬大寿がヘディングで折り返す。それを久保壮輝が頭で合わせて、ゴールに流し込んだ。
先制した山梨学院はハイラインを保ち、細かくラインコントロールをして中盤のスペースを圧縮するとともに、4-4-1-1、ときには5-4-1になり、昌平攻撃陣がプレーするスペースと時間を奪った。
前半終了間際、わずかな間延びに気がついた長谷川監督は「(選手同士の)距離感が広くなってきたから、もう1回声をかけろ」と選手たちに注意をうながしている。
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