30歳になった「和製アンリ」。伊藤翔がゴール量産で鹿島を牽引 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by AFLO

 記録に目を通せば、4年間で出場試合数は49。得点も8に終わっている。「和製アンリ」と騒がれた高校時代は、すっかり過去のものになっていた。10代の頃に騒がれていた選手が、年を重ねるごとに平凡な選手になっていく。そしていつしか消えていく。伊藤翔もこの「サッカーあるある」の1人のように見えた。

 その後、清水から横浜FM移籍。若干ではあるが昇進した。そこで記録した5シーズンの成績は134試合、29点。清水時代より活躍した。とはいえ、代表チームに呼ばれる気配はまるでなかった。相変わらず、「和製アンリ」の名に負けていた。

 そして今季、鹿島にやってきた。年齢は30歳。いつしかベテランになっていたが、それでもなお、ステップアップを果たしたことは少々意外だった。鹿島が伊藤翔を獲得した背景には、成長株のFW、鈴木優磨が故障中という事情があったのだろうが、ここまで活躍するとは、獲得に動いた鹿島のフロントさえ予想しなかったのではないだろうか。

 川崎戦のゴールは、「和製アンリ」の名に負けていなかった。そこで見せた速さ、キレのある技術は、ともに並の日本人選手とは思えないA級のプレーだった。

 身長は184cmある。大迫勇也より2cm大きい。さらに幅がある。それはティエリ・アンリとの違いでもある。どっしりとした、いい意味での重みがある。それでいて遅くない。そしてなにより、かつてに比べてバランスがよくなっている。その結果、動きに円滑さが増した。

 アンリが苦手としたポストプレーにも長けている。アンリ2世というよりオールラウンダー、万能型FWだ。日本代表級の大型FWとして知られる杉本健勇(浦和レッズ)より頼りになる存在に見える。

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