30歳になった「和製アンリ」。伊藤翔がゴール量産で鹿島を牽引 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by AFLO

 鹿島に伊藤翔ありと言わしめた試合は、Jリーグ序盤戦の大一番、第2節の川崎フロンターレとのアウェー戦だった。0-1の劣勢から同点ゴールを叩き込んだ右足シュートである。

 右サイドバック内田篤人が川崎のバックラインの背後に高々としたロングボールを蹴り込むと、伊藤翔は川崎のディフェンダー、奈良竜樹に走り勝ち、トップスピードのまま左足のインステップにボールをスッと収めた。

 このトラップがまず秀逸だった。直後に、それと反対の右足で放ったシュートが、逆サイドのゴールポストに当たり、角度を変えながらネットを揺るがすというその軌跡の美しさにも酔いしれることになった。今季これまで見たゴールの中で、もっとも鮮やかなゴールはどれかと問われれば、このゴールを迷わず推す。

 キャッチフレーズは「和製アンリ」。中京大付属中京高校3年の時にアーセナルの練習に参加。そこで当時アーセナル監督のアーセン・ベンゲルからそう言われたと聞くが、この言葉のインパクトが強かったこともあり、高校時代から大物選手として通っていた。多くのファンから期待を寄せられる注目選手だった。

 卒業後は日本企業が買収したフランス2部(当時)のグルノーブルへ。高校生がJリーグを経ずに外国のクラブとプロ契約した最初の選手としても知られている。

 ところがグルノーブルでは鳴かず飛ばず。チームはタイミングよくフランス1部に昇格したが、伊藤翔に出番が回ってくることはほとんどなかった。3年後、あえなく帰国。清水エスパルスに入団した。

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