あのストイコビッチがベンゲル就任に興奮。「素晴らしい監督だよ!」 (5ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 2月12日に行なわれた横浜マリノスとのプレシーズンマッチは、FWにコンバートされた岡山哲也のゴールで先制しながらも1-3で敗れたが、ベンゲルは「面白いゲームだった。組織面ではこれからの目標を見せてくれた。ゾーンディフェンスという点では練習の成果があった」と、キャンプの成果に一定の手応えを示した。

 この試合では、2トップの後ろにストイコビッチを配置する4-3-1-2が試された。しかしキャンプでは、彼を2トップの一角に組み込む4-4-2が一貫して採用されていた。

 当時のJリーグでは、4-4-2を採用するチームは決して少なくなかった。しかしその多くは、中盤を2人の攻撃的MFとダブルボランチで構成する、「中盤がボックス型の4-4-2」だった。

 一方で、ベンゲルが導入したのは、ミランを筆頭に当時のヨーロッパの多くのチームが採用していた、MFが横一線に並ぶ「中盤がフラットな4-4-2」だった。中西は、「それについて、ベンゲルから納得のいく説明があったんです」と証言する。

 ベンゲルの説明はこうだった。

 ペナルティエリアの両サイドのラインを基準にグラウンドを縦に3分割して、左サイド、中央、右サイドに分ける。そうすると、面積の割合は左サイドが20%、中央が60%、右サイドが20%になる。

 20%の左サイドのエリアには左サイドバックと左サイドハーフを置き、右サイドも同じく2人を置く。残った60%の中央のエリアには2人のセンターバック、2人のセンターハーフ、2トップの合計6人がいる。

「だから、守備のバランスは4-4-2が一番いいんだ、と」

 2月19日、ブルガリアの強豪レフスキ・ソフィアとの一戦はトーレスと森山泰行のゴールで2-1と勝利し、ロシアの名門ロコモティフ・モスクワ戦はストイコビッチのゴールで追いついて1-1のドロー。トヨタカップを2度制したことがあるサンパウロとのゲームは米倉誠、森山のゴールで2-1とモノにし、最高の結果でプレシーズンマッチを終えた。

 この結果にはベンゲルも「まだ満足のいく内容ではないが、一流クラブに勝ったことで、さらに選手は自信をつけた」と笑顔を覗かせた。

 ところが、2週間後に開幕するリーグ戦で待っていたのは、前年以上の低迷だった。

(つづく)

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