あのストイコビッチがベンゲル就任に興奮。
「素晴らしい監督だよ!」 (2ページ目)
当時のベンゲル、ストイコビッチについて語る中西哲生 photo by Tanaka Wataru しかし、ストイコビッチは低迷するチームの救世主にはなれなかった。ゴードン・ミルンが指揮を執るチームは戦術が破綻していたうえに、ストイコビッチ自身のコンディションも整っていなかったからだ。
「体が絞れていなくて、重そうでしたからね」
そう証言するのは中西哲生である。英語が話せた中西は、ストイコビッチと食事に出かけたり、洋服を買いに行ったりと、プライベートの時間を共有することが多かった。
「練習の次元は明らかに違いました。なんでもできるし、ものすごく負けず嫌いだし。立ち居振る舞いも絵になる本物のスターだなって。ただ、コンディションが悪かったから、能力の半分も出せていなかったと思います。94年は僕がボランチを務めることが多かったんですけど、僕が先発でピクシーがベンチという試合もあって、あり得ないよな、と思っていましたね」
ベンゲルが新監督に決まったことで、グランパスとの契約を延長したストイコビッチは、1994年の12月末にユーゴスラビア代表に招集された。対外試合禁止の措置が解けたユーゴスラビア代表は南米遠征を組み、12月23日にブラジル代表と、26日にアルゼンチン代表との親善試合を予定していた。
ちょうど同じ時期に、すでにグランパスとの契約を締結したベンゲルが新外国人選手獲得のためにブラジルまで視察に訪れており、ユーゴスラビア代表の宿舎で2人は面会した。
「ピクシーが、『ブラジルでベンゲルに会ったんだ。やはり素晴らしい監督だよ』と嬉しそうに話してくれたんです。超一流選手をここまで高揚させるベンゲルって、いったいどんな監督なんだろうと思いました」
新シーズンを前に、中西の期待は高まる一方だった。
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