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日本代表がアウェーで苦戦する理由 (2ページ目)

  • photo by Getty Images

 逆に相手に攻め込まれたとき、大したピンチでもないのに、対戦相手のサポーターが盛り上がると、かなり危ない局面だという錯覚に陥る。それがアウェーで感じる圧力というものだ。精神的に、「どうも自分たちはうまくいってないんじゃないか」と思い込んでしまいかねない。

 中国での試合は、クラブでも代表でも、特にそういう圧力を感じることが多かった。自分たちのプレイがいいのか悪いのか分からなくなり、ピンチではないのにピンチだと思ってしまう。その結果、プレイの判断に迷いが出やすくなる。

 そのほかにも、ピッチコンディション、審判のジャッジの基準など、選手がナーバスになる要因はいくつかある。そうやっていろいろなことに気を取られて神経をすり減らし、疲労してしまう。つまり、サッカーだけに集中できない環境がアウェーであり、サッカー以外の要因で、判断を要求される材料が増えていく。そして、ひとたびナーバスになると、ネガティブな思考にも陥りやすいし、スポーツ選手は規則正しいルーティーンで生活しているので、急にリズムが狂うと、それがプレイに悪影響を与えてしまう。

 私自身、1993年のW杯アジア1次予選で初めて中東のUAEに行き、すぐに順応できなかった苦い経験がある。その遠征では少し神経質になりすぎて、体調を崩してしまった。それでもオフト監督から「起用する」と言われたので、そのときは満足に練習もできないまま試合に出た。ウォーミングアップで少し体を動かしただけで出場したが、調子がいいとは言えなかったため、結局、後半途中に交代したことは今でもよく覚えている。その経験もあって、しばらくは水や食事、気候や時差について、かなりナーバスになる時期があった。ただし、経験を積むことで、適応ができるようになっていった。

 私の場合、適応に少し時間がかかるタイプだったと思うが、30歳前後からはアウェーの環境に対応できるようになった。当然、その選手のメンタルやフィジカルの強さ、適応力というものは問われるが、アウェーでの厳しい環境を経験し、「アウェーとはそういうもの」だと思うことでストレスを感じなくなっていく。

 アウェーに行ってよくあることだが、選手が泊まっているホテル周辺で、対戦国のサポーターが選手を眠らせないように騒いで、嫌がらせをする。あるいは、ホテルの部屋の電話が夜中に鳴ったり、夜中、誰かが部屋のドアをノックすることもある。そういったいろんなことが起こり得るのがアウェーなのだが、それを知っていること、経験していることで対応ができるようになる。

 電話は鳴るものだということを知っていれば、最初から回線を抜いておけばいい。ドアをノックされても、そういうものだからとわかっていれば、気にしないで眠れる。それにストレスを感じることはなくなっていく。

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