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サッカー日本代表が最速でW杯出場権を獲得しても素直に喜べない 「ぬるま湯」がもたらす大問題 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【失われたワクワクドキドキ感】

 日本サッカーは岐路に立たされている。

 日本のサッカー人気に火がついたのは1993年のJリーグ開幕だが、決定打となったのはその年の10月に行なわれた1994年アメリカW杯の最終予選だ。「ドーハの悲劇」で知られる最終戦のイラク戦は世帯視聴率48.1 %をマーク。これは中継したテレビ東京にとって歴代最高の視聴率だった。続く1998年フランスW杯最終予選も、イランとプレーオフを争ったジョホールバルの一戦は47.9%を記録(中継はフジテレビ)。W杯予選はテレビにとって歓迎すべきビッグコンテンツとなった。

 だが、アジア枠が4.5に拡大されるとともに、日本のレベルが上がるとワクワクドキドキ感は薄れていく。「絶対に負けられない戦い」というお決まりのあおり文句も、次第に神通力を失っていく。そこへきてのアジア枠の拡大だ。現在は絶対に合格する試験を見させられている状態にある。

 テレビ局がアウェー戦の放送を避けるのも頷ける。高額だと言われる放映権料と期待される視聴率は不釣り合いな関係にあるのだろう。ただし、視聴先が動画配信サービスに限られれば、視聴者の絶対数は減る。普及発展の足枷になることは言うまでもない。そもそも試合がエンタメ性に欠ける楽な内容ばかりとなれば、視聴を逃しても後悔はない。

 代表戦は日本のサッカー界においては一番のビッグマッチだ。日本のサッカー産業は代表チーム中心で回ってきた。クラブサッカーありきの欧州とは状況が決定的に違う。世界的に見て、日本ほど代表チーム中心主義に染まる国は珍しい。代表戦の価値の低下は深刻な問題と言わずにはいられない。

 選手のレベルは右肩上がりが続く。今予選では代表チームも史上最強ぶりを発揮している。繰り返すが2位以下に大差をつけ、W杯出場に王手を掛けている。皮肉と言わざるを得ない。

 相手が弱ければ、好勝負が期待できなければ、ホーム戦のスタンドは埋まらない。日本は今予選ですでに3試合ホーム戦を行っているが、3戦目のオーストラリア戦以外は、舞台となった埼玉スタジアムに空席が目立った。関心の低さを表す顕著な姿と言える。

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