「森保はラモスさんに『つまんねぇな』と怒られていた」吉田光範が明かすオフトジャパンの裏話 (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

 1点を追う日本は後半、吉田に代えて長谷川健太を投入。4-3-3のシステムに変えた。その後、後半28分には三浦泰年を下げて、中山雅史を入れて反撃に出た。しかし、ベンチから戦況を見ていた吉田は、日本が攻め急ぎ、いつもの日本らしさがなくなっているのを感じていた。

「なかなか自分たちの時間を取り戻せないので仕方のない部分もあるのですが、もう少しボールを保持して、落ちついて攻めてもいいかな、と。とにかく、我慢しつつ、次の1点をどちらが先に取るかだなって思っていたんです。

 そうしたら、イランにカウンターから2点目を取られてしまって......。あれは、ショックが大きかったですね」

 イランに追加点を奪われて、ラモスは苦々しい表情のまま、腰に手を当てて何かを考えているようだった。日本は試合終了間際に中山がゴールを決めて、1点を返すのが精いっぱいだった。イランに敗れた日本は、1分1敗で最下位に転落した。

「イランは単純に日本のストロングポイントを消して、自分たちの得意のスタイルに持ち込んだ。日本は、それにまんまとハマってしまった。

 今年1月のアジアカップで日本はイランに負けたけど、まさに歴史は繰り返す、でしたね。イランは30年前と同じく日本のよさを消して、ロングボールを多用してルーズボールを拾い、日本の最終ラインを下げて生まれたスペースを使って攻撃してきた。

 僕らも、それにやられた。相手の流れを止められず、ラモスさんやカズを封じられ、相手の思いどおりにやられての完敗でした」

 2試合を終えて勝ち点1は、想定外だった。ホテルに戻り、食事をしていても、選手たちからは笑顔が見られなかったという。「次の北朝鮮戦に負けたら終わり」という事実を誰もが理解しており、練習でも過去にないほどの緊張感が漂っていた。

「いきなり土壇場に追い込まれましたからね。(チーム内の)ピリついた感が半端なかったです」

 それでも吉田は、むしろこのくらいの緊張感があってもいいと思った。アジアカップで優勝して以来、過信とまでは言わないが、アジアチャンピオンとして「(W杯予選も)イケるんじゃないか」というムードが、チーム内に少なからずあったことを感じていたからだ。

 初戦のサウジアラビア戦をドローで終え、2戦目は初戦の韓国戦で0-3と負けたイランだったので、戦力的には「(イランより)自分たちのほうが上だ」という余裕も見え隠れしていた。そうした心の隙が、結果にも表われたような気がしていた。

「もう1回、ネジを巻き直して『やるぞ!』という気持ちになりましたね。やっぱり、W杯に行きたかったんで」

 指揮官のハンス・オフトも、波に乗りきれないチームに刺激を与えた。北朝鮮戦では、調子が上がってこない高木に代えて中山を、福田に代えて長谷川をスタメンに起用。左サイドバックも三浦泰に代えてベテランの勝矢寿延を入れ、4-4-2から4-3-3へとシステムを変更した。

「この時の中盤は、初戦のサウジ戦で採用したダイヤモンド型から、逆三角形の中盤になりました。僕がアンカーに入って、ラモスさんと森保が前。ただ、森保はやや守備に重きを置く感じでした。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る