「本気の世界とは圧倒的な差がある」U-24日本代表がまたも思い知らされた壁 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐藤博之●撮影 photo by Sato Hiroyuki

 準決勝に勝てば、日本の男子サッカーとしては五輪史上初の決勝進出となる。

「歴史を作るというより、僕たちの目標である金メダルを獲りたいだけ」(上田綺世)

「ここを超えられるかどうか、日本サッカーの歴史を見ても大事な試合になる」(遠藤)

 8月3日、埼玉スタジアム。南からの風が入り、日が落ちてもなお蒸し暑さが残るなか、スペインとの準決勝は始まった。

 試合は予想どおり、ボールを保持するスペインが優勢に進める。だが、日本はそのなかでも攻撃の糸口を見つけ出そうとしていた。

「奪ったボールを前につけて逆サイドからカウンター、というのを狙っていた。それをみんなが怖がらずにやれたのが一番よかった。いい形が出ただけじゃなく、そこで仕留めたかったが、狙いとしては悪くなかった」(吉田)

 拮抗した試合は、両チーム無得点のまま終盤へ。すると84分、スペインは勝負をかけるべく、FWマルコ・アセンシオを投入。

「交代した選手はフレッシュなので、まずは1対1でやられないようにした」(中山)

 これまでの試合を見る限り、決して調子がよくないアセンシオ。しかし、延長後半の115分、日本選手の意識がFWミケル・オヤルサバルに集中した瞬間、オヤルサバルからのパスを受けた背番号7は流れるように左足を振った。

「最後に試合を決めるのは個(の力)。チームとして統一感を持って戦いながらも、やっぱり最後に(個が)力を発揮できるかどうか。アセンシオはあそこで決める力がある」(遠藤)

「やっぱり個(の力)ではがされてしまった。それをはがされてもカバーし続けて、というのを徹底していたが、最後のワンプレーだけ、この差が......。(アセンシオは)伊達にレアル(・マドリード)でやっていない」(吉田)

「試合を思い出しても、いろんなシーンが思い出せない。アセンシオがターンして左足で一発巻いて打ったシュートだけが鮮明に残っている」(相馬勇紀)

 アセンシオの左足から放たれたボールは、GK谷の指先をかすめるように弧を描き、ゴール左隅のネットを揺らした。0-1。勝負は決した。

「死ぬほど悔しかったけど、出せるもの全部出したので、涙も出てこない。今はもう何もない」(久保)

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