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なでしこはコミュニケーションが濃い!
ベテランがピッチ内外でフル稼働 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 2失点目は、スローインでサイド深くまで持っていかれた。3失点目は中盤で競り負けたボールを、そのまま右サイド奥へ大きく展開された。すべてイングランドの狙いどおりのパターンだ。なでしこにしてみれば予想できた範囲の相手のプレーであり、そのうえでの失点だっただけに「問題ですよね」と鮫島は肩を落とす。

 試合の展開を読める経験を持った選手が、鮫島ひとりだったことが痛かった。綿密な意思の疎通があるからこそ、アメリカ戦、ブラジル戦のような戦いがあった。ひとつボタンを掛け違えると崩壊する危うさを露呈したのが最終戦ということだ。その両方を体感できたことはプラスに捉えてもいい。イングランドは常に日本に危機感を与えてくれる好敵手であることあらためて実感する。

 日本は若手が着実に伸びてきている。遠藤純(日テレ・ベレーザ)は、ほとんど違和感なくコンビネーションプレーに加わり、好機を演出。杉田や松原、南も自分のプレーに多少なりとも手応えを掴んでいる。こうした若手を引き上げているのがベテラン選手だ。イングランド戦のピッチで鮫島が示したように、練習中も若手を捕まえて有吉、宇津木が話し込む。今までも新しい選手が招集される度にこうした光景が幾度となく繰り返されてきたが、ワールドカップまで100日を切っている今回はコミュニケーションがさらに濃い。

「練習中はもちろん、食事中でも時間さえあれば、とにかく話をしてその選手を知ることを最優先にしています」とは有吉。今までは時間をかけて距離を詰めていたが、その時間も惜しい。有吉らベテランに自ら意見を出し、全力でぶつかってくるのが今回の新戦力だ。

 有吉曰く「ここで力を出さなきゃっていう覚悟を持ってきている選手たちが多い」というワールドカップ直前ならではの側面もあるが、ユース年代に高倉麻子監督の指導を受けた選手が多いということも、若手が物怖じしない要因のひとつだろう。

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