田口泰士が語るブラジル戦。「ネイマールにやられた理由」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Sueishi Naoyoshi

「よく聞けよ、代表に入ったぞ」

 彼はそれを聞いて、再び鼓動が早まるのを感じた。

「それは、マジでやばいっすね......」

 そう返すのが精一杯だった。ジャマイカ、ブラジル戦の代表メンバーは数日前に発表されており、負傷した吉田麻也の代替選手として招集された。そうした緊急的状況だっただけに、寝耳に水の一報になった。初の代表招集。候補に名前が挙がっていたわけでもなかった。"これはからかわれているんじゃないか"とさえ疑ったが、それは真実だった。

「やばいよ」

 電話を切って事情を話すと、年下のチームメイトが祝福してくれた。しかし、彼には実感が湧いてこなかった。

<やばいな>

 言葉にならない高揚感だけが、体を駆け巡った。その日、彼はDVDを借りずに家に帰っている。

 2014年10月、名古屋グランパスに所属する田口泰士(23)は初めて日本代表に選出された。

 ブラジルW杯後に代表監督に就任したハビエル・アギーレは、選手をシャッフルしながら代表チームの今後の核を模索していた。田口はその候補の一人として選ばれることになった。ジャマイカ戦で香川真司と交代して代表デビューを飾り、続くブラジル戦は先発フル出場を果たした。さらに11月の代表戦でもメンバーに招集され、ホンジュラス戦でも長谷部誠と交代で途中出場している。

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