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【プロ野球】"異様な全力疾走"がスカウトを震わせた男 無名から這い上がる「ギータ2世」寺本聖一の現在地 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

 その直後、オリックスのシートノックが始まる。社会人チーム相手とあり、ルーキーも交えた若い選手たちでのチーム編成だ。ノックの打球が強いゴロになって、ライト前に飛ぶ。

 おそらく、わざと深めに位置していた寺本が、打球に向かって突っ込んでくる。そのスピードと弾力、そして、打球に働きかける意志と意欲。拾って素早くバックサード、バックホームする猛肩の生命力。学生時代の寺本を思い出させる光景だった。

「6番ライト」でスタメン出場すると、渾身のスイングからセンターとライトに痛烈打球の2安打。さらに絶妙のスタートから、二盗も決めてみせた。今の彼にとっては「ベストパフォーマンス」だったに違いない。

 ただ、この試合、センターを守った7年目・遠藤成は2安打3打点、1番DHで出場した2024年ドラ1の麦谷祐介は3安打3打点2盗塁。外野のライバルたちは、やすやすと彼以上の結果を出してみせた。

「寺本、悪くないですよ。足も速いし肩も強い。バッティングもツボを持っていますしね。あとは、ちょっとガーッといきすぎるところがね......」

 ある球団関係者はそうつぶやいていた。

 2024年育成ドラフト4位でプロの世界に飛び込み、怖さをあれこれ体感したはずのルーキーイヤー。昨年はキャンプ前の新人合同自主トレ中に肋骨を折って、スタートで出遅れた。 

 少し離れたところで見ていた試合前のアップの時に目が合い、「ギータ2世」の顔が一瞬、パッと華やいだ。今年は、いい状態で野球ができているのだろう。よく陽に焼けたその笑顔の輝きに、これから伸びていく人のみずみずしさが発散されているようだった。 

著者プロフィール

  • 安倍昌彦

    安倍昌彦 (あべ・まさひこ)

    1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。

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