中東初のプロ野球リーグが描く奇想天外な新たな野球 ラクダで入場、マネーボール、ファイアーボール... (3ページ目)
イニング間に披露される地元インターナショナルスクールの女子学生によるチアダンス photo by Asa Satoshiこの記事に関連する写真を見る 試合中であれば何度でも出場できる代走専門の「指名代走(Dランナー)」や、ホームランで得点が倍になる「マネーボール」は以前から発表されていたが、投手が三振を奪えば一瞬にしてそのイニングが終わる「ファイアーボール」が追加されることが開幕戦で新たに発表された。
冒頭で紹介した楽器を使った応援も、観戦をより楽しめるものにするための工夫だ。突如として誕生したプロ野球リーグには、当然ながらまだ固定ファンがいない。そこで、外野席に陣取る楽団はリーグ側が用意したものだ。
リーグCEOのカッシュ氏はシーズン1の開幕に先立ち、日本、メキシコ、ドミニカの各スタジアムを訪れ、それぞれの応援文化を視察したという。野球の興行において、スタンドの盛り上がりが欠かせないことを理解し、その要素を中東の地にも取り入れたのだ。
スタンドの多数派を占める南アジア出身の招待客たちの反応を見ていると、内野で繰り広げられるゲッツーなどのプレーには、いまひとつピンと来ていない様子だが、クリケットが盛んなお国柄とあって、大飛球が外野へ飛ぶと一気に盛り上がる。もっとも、その熱気もチアリーダーの登場にはかなわないのだが......。
【ドバイ流セレモニーの衝撃】
11月14日からの開幕3連戦は、ムンバイ・コブラズ対カラチ・モナークスのカードで行なわれた。記念すべきリーグ第1戦は、満席となる3000人の観衆でスタンドが埋まったという。
リーグ登録選手のなかに地元・ドバイ出身の選手はひとりもいないが、試合前に流れる国歌はもちろんUAE(アラブ首長国連邦)の国歌だ。この不毛の地に野球の種を蒔く機会と場所を与えてくれた国への感謝、そして中東に野球が広まることへの願いを込めて、一同はビジョンに映し出されたUAE国旗に敬意を示す。
そして何より、試合前の最大の見どころは先発投手の登場シーンだ。日本ではリリーフカーが定番だが、ここドバイでは先発投手が、両翼ポール近くのファウルゾーンに設けられたブルペンからラクダに乗ってマウンドへと向かうのだ。あまりの高さに、投手たちは少々不安げな表情を浮かべている。ある意味、試合前の緊張もどこかへ吹き飛んでしまいそうだ。
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