検索

小林雅英は勝てば日本シリーズ進出の大一番で4点差を守れず逆転負け 娘からの「パパのバカ」のひと言に救われた (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

「たとえば、ノリさん(中村紀洋/当時・近鉄)がシュート狙っていて、会心のファウルを打つとすごく気持ちよさそうな顔をするんですよ。でも、僕は心の中で『ありがとうございます』と。そのつもりで投げているし、しっかりカウントを稼げているわけです。それで次にスライダーを投げたり、シュートでも曲げる位置を変えたりすると、詰まったり、内野ゴロでアウトにできる。小久保さん(裕紀/ダイエー)もそうでしたね。うまい具合に追いこめると、打ち取れる確率が上がります」

【1勝に対しての執着心】

 自己最多の37セーブを挙げた02年に続き、03年も好調を維持して44登板で33セーブ。だが、ボビー・バレンタインが監督に復帰した04年は51登板で20セーブに終わり、8勝5敗、防御率3.90と安定感を欠いた。抑え失敗が目立ったなか、気持ちの切り替えはどうしていたのか。

「気持ちというか、僕は思考ですね。全部、自分で考えたことの表現、結果なので。だから失敗にしても、失敗の許容範囲をつくり出す。ここまではOK、これ以上の失敗はしないよねって。その範囲を超えての失敗もありますけど、それでも思考を切り替える。失敗の原因は必ずどこかにあるので、フォームなのか、バランスを崩していたのか、チェックするとすぐ修正できますから」

 前任者のブライアン・ウォーレンが抑えに失敗し、ロッカーで暴れて発散する姿を小林は見ていた。だが、思考を切り替える小林に発散の必要はない。失敗した時の映像を見られる時はじっくりと見て原因を探し、できる修正をしていたという。

 一方でチームの勝利、勝ち投手の権利を消したことについては、突然の配置転換後と変わらず「無責任」で通したのだろうか。

「先発ピッチャーには『さーせん!』って言ってましたよ。でもやっぱり、そこまで重く『すみません......』とは言わなかった。『文句あるならおまえ最後まで投げろよ』(笑)と、やや野手よりの感覚でしたね。ブルペンが長くなると、そんな意地の悪い、汚い考え方になるわけです(笑)。ただチームの勝利を消した失敗に関しては、その年は重かったですね」

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る