篠塚和典は「笑ってんじゃねぇよ!」、元木大介は「ずっとバントやっとけ」 長嶋茂雄の激怒エピソードをふたりが明かした (4ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

篠塚 「投げるぞ!」って言われたけど、どれくらい速いのかとか、どんなボールを投げるのかわからない。だから、初球を見逃したんだけど......そうしたら、次のボールを頭のほうに投げてきた。そこでミスターに言われたのは、「1球目から準備しろ」ということ。当時の自分はレギュラーではなく代打で打席に立つことも多かったんだけど、「そういう場面で1球目を見逃していたら損をする。それをわからせるために頭に投げたんだ」と(笑)。

 その時は、土井正三さんのタイカップ型のバット(グリップエンドに向かって太くなる形状のバット)で打っていたんだよ。グリップが太いから大きく構えられず、どうしてもスイングが小さくなっていた。ミスターはそれが気になったみたいで、投げている最中に自分のところにきて、「おい、シノ。ちょっとバットを見せてくれ」となってね。

 それでバットを渡したら「なんだ、このバットは?」と聞かれたから、「土井さんに『使え』と言われました」と言ったら、「こんなバットが使えるか! 自分のバットを使え」って(笑)。それからは自分のバットを使ったよ。

――それはたしかに強烈なエピソードですね(笑)。ちなみに元木さんは、どんな時に長嶋さんに声をかけられましたか?

元木 声はよくかけてもらいましたよ。ずっとスタメンで使ってもらっている時期に、ミスターに「昨日はいいところで打ったな」と褒めてもらった時があって、そのあとに「ちょっと休むか?」と聞かれたんです。それに「大丈夫です。頑張ります!」と返したら、「じゃあ、頑張れよ」と。それでまた、試合に使ってくれました。

篠塚 「休むか?」と聞かれて「はい」って言ったら終わりだよね(笑)。

元木 そうですね。ほかにも、バッティング練習をしている時などに「なぜ試合でそれができないんだ?」と言われて「すみません」といったやりとりをしたり、いろいろな会話をさせてもらいました。選手にとって、監督に声をかけられるのはうれしいものです。僕が現役時代に一番長くお世話になった監督はミスターでしたし、可愛がっていただいた部分もあると思います。

――言われてうれしかった言葉は?

元木 ある年のシーズンが開幕する時、僕と清原和博さんが監督室に呼ばれた時があったんです。「なんだろうな」とふたりで部屋に入ったら、「1年が始まるな。おまえらふたりに任せたぞ」と言われて。自分はレギュラーでもなかったし、「なんで俺に? 誰かと間違えているのでは?」と思いましたけどね。

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