代打の神様・川端慎吾が明かす極意「じつに厄介な存在」で申告敬遠はすでに4つ (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Koike Yoshihiro

 この試合、延長10回裏にホセ・オスナの申告敬遠のあと、次打者の武岡龍世のレフト前ヒットでヤクルトがサヨナラ勝ち。前半戦を3連勝で締めくくった。

 後半戦、一つひとつ順位を上げていくためには、「代打・川端」は大きなポイントのひとつで、相手チームが川端と勝負せざるを得ない状況をつくることが重要になる。

 前出の長岡は8番を任されることが多く、「なんとか慎吾さんにつなごうという気持ちで打席に入っています」と話した。前述の7月4日の試合では、川端のヒットで一塁から一気にホームに生還したのが長岡だった。

「二死二塁とかで慎吾さんに回してしまうと勝負されないことが多いので、その前に僕がしっかり打たないといけないんですけど、前半戦はなかなかうまくいかなくて......。後半戦は慎吾さんだけでなく、うしろにつなぐ意識で頑張ります」(長岡)

 長岡をはじめ、不調だった選手たちも復調の気配があり、若手にもヒットが出るようになった。そうなれば、川端が勝負を避けられる場面は少なくなっていくはずだ。

 川端に後半戦に向けて、バッティングでもっと向上したいところはあるかと聞くと、少し考え込んでから「もっと長打を打てたらいいんですけど」と話した。

「とはいえ、代打で長打を打つのは難しいので、確率性を重視してランナーを還すことに集中したいですね」

 髙津監督は前半戦の総括のなかで、「できることを一生懸命、とれるアウトを一生懸命、防げる1点を一生懸命。それに尽きるんじゃないかと思います」と語った。

 これらを積み重ねた時、「代打・川端」の大仕事は回ってくるはずだ。

プロフィール

  • 島村誠也

    島村誠也 (しまむら・せいや)

    1967年生まれ。21歳の時に『週刊プレイボーイ』編集部のフリーライター見習いに。1991年に映画『フィールド・オブ・ドリームス』の舞台となった野球場を取材。原作者W・P・キンセラ氏(故人)の言葉「野球場のホームプレートに立ってファウルラインを永遠に延長していくと、世界のほとんどが入ってしまう。そんな神話的レベルの虚構の世界を見せてくれるのが野球なんだ」は宝物となった。以降、2000年代前半まで、メジャーのスプリングトレーニング、公式戦、オールスター、ワールドシリーズを現地取材。現在は『web Sportiva』でヤクルトを中心に取材を続けている。

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