中嶋聡、谷繁元信、古田敦也とバッテリーを組んだ国立大初のドラフト1位選手・杉本友が語る3人の捕手力 (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual,KoikeYoshihiro

「ID野球の申し子」と評され、ヤクルト黄金期を支えた古田敦也「ID野球の申し子」と評され、ヤクルト黄金期を支えた古田敦也この記事に関連する写真を見る

── 古田さんも捕ってから早い印象がありました。

杉本 古田さんは、早いステップをしっかり踏んで投げるのが特徴だと思います。しっかりステップを踏むから、強い送球が投げられる。しかも古田さんはコントロールが抜群で、だから高い盗塁阻止率を誇ったと思います。

【中嶋聡の懐の深さ】

── 現役時代に3人とバッテリーを組んで、印象深い言葉、出来事はありましたか。

杉本 私の新人時代、中嶋さんに生意気にもこう言ったことがありました。「今日はストレートのコントロールの感覚がよくないので、変化球主体のリードをしてもらえますか」と。すると中嶋さんは「いや、いいストレートがきているよ。そのまま投げ込んでこいよ」と返してくれました。

 私が言わんとすることは、ルーキーの意見にもしっかり耳を傾け、そのうえで自分の意見を言ってくれた。そういうところに中嶋さん懐の深さを感じました。昨年、中嶋監督率いるオリックスが26年ぶりの日本一を遂げましたが、裏方さんを含めチーム全体で戦っている雰囲気が伝わってきました。それも中嶋さんのそうした姿勢が、チームに浸透しているのだと思います。これは教育現場にいる私も、あらためて意識していきたいと考えています。

── 谷繁さん、古田さんはどうでしょうか。

杉本 谷繁さんで強く印象に残っているのは、金本知憲さん(当時・広島)に初球を打たれた時、「完全におまえの力負けだ」と言われました。初球の勝負球を打たれたわけですから、当然です。谷繁さんは必要以上に慰めるのではなく、単刀直入に厳しく言ってくれる。逆にポジティブな気持ちにさせてくれました。古田さんは、データの裏づけを論理的に説明できて、しかも革新的な人です。だから試合においても、球界再編騒動の時も、先頭に立って選手をリードしていけたのだと思います。

 プロ野球での経験は、私の教員生活と監督生活に生きています。この3人と接することができたのは、私の財産です。3人に共通するのは、他人の話に耳を傾けること。先述したように、私も生徒の話を傾聴し、それを踏まえて「私はこう思うけど、どうだろう」と、よりよい方向に導けていければと思っています。

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