「球界一のノッカー」海を渡る。NHKでも取り上げられた手腕は新天地・台湾で何を掴んでくるのか (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • 西田泰輔●撮影 photo by Nishida Taisuke

【コーチも海外で勝負する時代】

 玉木にとって「渡りに船」だった。

「日本にとどまらず、いろんな野球を見てみたいという思考はもともとありました。アメリカや台湾など日本以外も見ていかないと野球人として成長していかないと思っていたので、チャンスが訪れたなと」

 現役時代はアメリカの独立リーグなどでプレーし、イラン代表や香港代表の監督を務めた経験もある色川には、野望がある。日本球界に、既存のルートとは違う道を開拓したいという思いだ。

 すでに茨城球団のGMとしてダリエル・アルバレスをソフトバンクへ、セサル・バルガスをオリックスに送り出した。今年のドラフトでは、高校中退など紆余曲折した渡辺明貴がDeNAに育成4位で指名された。

 日本球界に新風を吹き込む色川にとって、玉木を統一ライオンズに送り出すのは、新たな挑戦の第一歩になる。玉木への期待を、色川はこう語る。

「NPBのコーチを長年続けて、そこから自らの意思で海外に行くのは、なかなかなかったルートです。広い世界に出て、もっと引き出しを増やし、NPBに戻ってきた時にコーチとしての価値が向上していることが理想です。

 玉木さんには新しいコーチのあり方を、ロールモデルとして示してほしい。台湾に行くのは玉木さんの指導者人生のプロセスだと思っているので、次のステージも楽しみにしています」

 玉木は現役時代にスポットライトを浴びたわけではないが、「球界一のノッカー」と言われるまでになった。今は台湾の言語を学んでいる最中だ。通訳はつくが、なるべく頼りたくないと考えている。

 NPBのコーチは1年契約が通例だが、台湾球界ではシーズン中の4月から10月までと短くなる。その期間に少しでも多く吸収しながら、コーチとしての手腕をどれだけ発揮できるか。

 来季、海の向こうで千賀や吉田が大きなチャレンジを始めるのと同じように、玉木は新たなユニフォームをまとって勝負に出る。(敬称略)

【筆者プロフィール】中島大輔(なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。著書に『プロ野球 FA宣言の闇』『野球消滅』など。

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