野茂英雄の「珍記録」完投勝利、高校野球での執念の2スイング......。ベテラン実況アナが仕事中に見入った試合ベスト5 (3ページ目)

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【3位】2008年8月20日 北京五輪 女子ソフトボール3位決定戦

日本vsオーストラリア 4-3

 決勝トーナメント初戦でアメリカに1-4で敗れ、ここで勝てば決勝でもう一度アメリカと対戦、負けたら銅メダルが決定という試合。私は会場ではなく北京のスタジオでの実況でしたが、そこまで現地の緊張感が伝わってくるようでした。

 みなさんの記憶にも強く残っていると思いますが、上野由岐子投手がとにかくすごかった。同日のアメリカ戦で延長タイブレークの9回147球、この試合も12回をひとりで投げきって171球。合計318球を投げましたからね。

 基本7回までのソフトボールで、1日で投げる球数としてはかなり多い。その時の代表選手には、予選で3勝0敗と好投した坂井寛子投手などもいましたが、決勝トーナメントに進出した時点で「決勝まで上野でいく」という雰囲気がチームに漂っていました。

 野球ではよく「エースを投げさせずに負けたら悔いが残る」とも言いますが、首脳陣には「上野が投げたほうがいい流れがくる。ゲームが壊れてもしょうがない」という強い意志があったんじゃないかと。しかも、2戦ともかなり競った試合になったので、途中で交代させることも難しくなりましたね。

 私もオーストラリア戦は球数を数えながら実況しましたが、試合が進むにつれてどんどん熱が入ってしまって。延長11回に1点を取り合い、3-3で迎えた延長12回、西山麗選手がサヨナラヒットを打った時は思わずガッツポーズしてしまいました(笑)。

 決勝は実況に入ってはいませんでしたが、「やはり上野投手でいくか」と。7回95球、前日の疲れを感じさせない、金メダルを引き寄せた気迫はさすがでした。2日で413球。あらためて、とんでもないです。

 上野投手は昨夏の東京五輪でも活躍し、日本の女子ソフトボールリーグ (JD.LEAGUE)のビックカメラで現役バリバリ。当時のアメリカの主要投手だったモニカ・アボット投手もトヨタレッドテリアーズでプレーしていますが、あれから14年後に2人が日本でプレーを続けていることは、まったく予想できませんでしたね(笑)。

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