野茂英雄の「珍記録」完投勝利、高校野球での執念の2スイング......。ベテラン実況アナが仕事中に見入った試合ベスト5 (2ページ目)
【4位】1994年7月1日 NPB 近鉄×西武 8-3
これも珍記録系なんですが、野茂英雄さんが16四球を出しながら191球を投げて完投勝利を飾った試合です。毎回ランナーを背負って、「いつ打ち崩されるか」と思っていたらいつの間にか最終回まで投げきってしまった。15残塁の結果に、当時の西武の主砲だった清原和博さんも「あれだけ荒れていたら狙い球が絞れない」と困惑していたようですね(笑)。
30年以上前からさまざまなスポーツを実況してきた上野氏 photo by Murakami Shogoこの記事に関連する写真を見る 私はこの日、近鉄側のベンチレポーターだったのですが、「近鉄の守備の時間が長いなぁ」と我慢して試合を見るような感じでした。回を追うごとに、「これは現実なんだろうか」と目の前の光景が信じられなくなっていくんです。なにせ105球がボールで、ストライクの86球より多かったですから(笑)。
ただ、ボールのキレやフォークの落差はすごかった。ランナーを出してからはギアが一段上がった感じもありましたし、いくら強力な西武打線とはいえ大量得点は難しい。それでも、さすがに交代していいくらい荒れに荒れていましたが、ブルペンで他の投手が準備する様子もありませんでしたね。当時は「点をとられなければ先発投手は交代させない」という時代。しかも監督は、現役時代に340完投した鈴木啓示さんでしたから。
野茂さんは鈴木監督と"いろいろ"あって、翌1995年にロサンゼルス・ドジャースと契約し、日本人2人目のMLB選手になります。同じ年にボビー・バレンタインさんが1度目のロッテの監督になったんですが、ある試合前の囲み取材の時に野茂さんの話題が出て。バレンタインさんは、「野茂はいい投手だけど、日本人で1番の投手だったわけではないでしょ?」と逆に聞いてきたんです。そこで「球速は速いけどコントロールが......」という話になって、私がこの16四球完投勝利の話をしたら、「本当か? 勝ったの?」と驚いていましたね(笑)。
独特のフォーム、規格外の投球、歩んだ野球人生......野茂さんのスケールの大きさを感じさせる試合でした。
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