坂本勇人が堕落した最大の理由はライバル不在。広岡達朗が巨人首脳陣に「なぜ競争相手をつくらなかった」と憤慨 (2ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin
  • photo by Koike Yoshihiro

 湯浅大は打力が弱すぎるし、増田陸はバッティングこそ成長の跡を見せるが、レギュラーを張るには全体的にレベルアップが必要だ。高卒2年目の中山礼都は坂本が1カ月離脱している間スタメンを任され、守備面は及第点、あとは打撃面をどう克服するか。また一昨年、開幕前にヤクルトからトレードで移籍してきた廣岡大志は、坂本の後継者候補として期待されたが、攻守において精細を欠いている。逆に廣岡が巨人に移籍したおかげで、ヤクルトは長岡秀樹が育ったという皮肉な結果となった。

 巨人は勝利を宿命づけられたチームゆえ、使いながら育てることが非常に難しい。これまでも若手を育成しようと積極的に使用したことはあったが、結果が出なければすぐに二軍降格。これでは選手のモチベーション維持にはつながらないし、尋常じゃないプレッシャーがかかるため思いきったプレーができない。

 そう指摘する広岡は、ルーキー時代の坂本について次のように語る。

「新人の時は、いい素材の子を獲ったなと思ったものだ。いつも丁寧に打球を処理しようという姿勢があった。一度だけ教える機会があり、そのあと見てやれなかったことが悔やまれるが、その時からひとつもうまくなってない。やることすべてが雑で、手を抜くことだけを覚えてしまったようだ。

 たとえば、守備の時に捕りやすいようにグラブを叩くシーンを見たことがない。これはほかの選手も同様だが、どの選手もラクをしようとしていて、これでは上達するはずがない。今の選手は『オレはうまいから』と驕りがあるせいで、わざと手を抜いているようにしか思えない」

緊張してエラーするのは下手な証拠

 広岡の現役時代は、とくに守備に関しては高い意識を持っていたと語る。

「オレが現役の時は、どこに打球が来ようが『絶対に捕る』という強い意志を持って構えていた。阪神の吉田義男、三宅秀史の三遊間コンビは、シートノックから試合さながらのスピードで捕球し送球していた。オレも長嶋茂雄と三遊間コンビを組み、一生懸命やった。片手で捕るようなことはせず、両手で捕って電光石火のごとく早く投げることを心がけた。シートノックは遊びじゃない。今の選手はシートノックを疎かにしている」

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