坂本勇人が堕落した最大の理由はライバル不在。広岡達朗が巨人首脳陣に「なぜ競争相手をつくらなかった」と憤慨

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin
  • photo by Koike Yoshihiro

 クライマックス・シリーズ進出どころか、最下位の可能性もある巨人。問題は山積みだが、なかでも喫緊のひとつとして坂本勇人の後継者問題が取りざたされている。

 今シーズンの坂本は、まず左内腹斜筋筋損傷で開幕一軍メンバーから外れ、5月1日には右膝内側側副靭帯損傷で1カ月以上の戦線離脱。さらに、7月7日には腰痛により3度目の登録抹消。まさに満身創痍の状態で、満足にプレーできていないのが現状だ。

 坂本と言えば、巨人打線のなかでも打力は抜きん出ており、ショートの守備でも安定感はいまだ健在だ。だが33歳という年齢を考えると、選手寿命のためにも守備にかかる負担を考慮していかないといけない。

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広岡が語る坂本勇人の新人時代

 そんな坂本の後継者問題に関して、プロ野球史上最高の遊撃手として鳴らした巨人OBの広岡達朗が吠えた。

「後継者というのは、監督やコーチがつくればいいだけの話だ。今の巨人はそれができない。『坂本にはライバルと呼べる存在がいないんですよ』ではなく、首脳陣がライバルをつくって競争させるべきなのだ。選手はライバルがいるのといないとでは大違いだ。言ってしまえば、ライバルがいないと人間は堕落してしまう。ライバルがいることで、レギュラーを張っていた選手は『アイツには負けられない』と思って一生懸命やるから、それが相乗効果となる。そういう環境をつくれないのは、監督、コーチが無能と言うしかない」

 広岡がヤクルト、西武の監督時代、レギュラーを安穏とさせないため、ライバルをつくり選手たちを競わせた。たとえば、西武黄金期の遊撃手として活躍した石毛宏典が新人王を獲った翌年、広岡が監督に就任した。初練習の時、「よくこんな下手くそで新人王が獲れたな!」と言い放ち、広岡は控えの行沢久隆を徹底的に鍛え、石毛を発奮させたことがあった。

 たしかに坂本に関しては、攻守にわたり巨人史上でも歴代トップクラスの選手のため、後釜など簡単に見つかるはずはない。

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