なぜ日体大は次々とプロへ投手を送り込めるのか。元プロの投手コーチが語る「計画登板」の重要性 (4ページ目)
コンスタントに投手たちが台頭するのは、辻の起用法に後押しされるところも大きい。大貫に示したのと同じように、1カ月など一定のスパンを決めたなかで、いつ、どれくらい登板機会を与えるかというプランを投手陣全体に提示するのだ。
「うちのリーグ戦で投げている選手の大半は、プロを目指しています。矢澤にしろ、勝本にしろ、プロに行った時にどうなりそうかまで話して練習しています」
プロで先発タイプを目指すなら、まず大学3年秋に週1度の登板で7イニングを目標にし、翌春には9イニングを月に4度投げられるようにする。その先に、プロでの先発ローテーション入りが見えてくる。
リリーフタイプの場合は、1週間のうちに2度登板し、3イニングずつくらい投げられるようにしていく。
こうして先まで具体的に見据えられるのは、辻のプロ経験が大きい。それでも先発かリリーフかを決めきれない場合、「いま悩んでるねん」と素直に伝えている。
「たとえば同級生のピッチャーに、『おまえが7イニングを1、2失点で抑えられるくらい台頭したら、勝本を後ろに回すこともできる。おまえも社会人を狙えるようになる』とか、全部正直に伝えます。そうやって全員で勝ちにいくのがうちのスタイル。こいつだけ、とかはないんですよね。
卒業した先まで見越しているので、リーグ戦で突然起用法を変えるわけにはいきません。そうやって勝てるとも思っていないですしね。大学中にしっかり準備の仕方を覚えて、目指すべきところに対してどう取り組んだかがうちでの評価になる。それなのに僕が起用法を崩すと、選手は『言っていることと、やっていることが違う』となるから、そこは絶対に崩さないところです」
日本ではプロアマを問わず、選手は練習でアピールし、オープン戦の"テスト登板"で結果を残せば、初めて公式戦で登板機会を与えられるという起用法が主流だ。だが、「来週行くぞ」といきなりチャンスを言い渡されると、もし身体のどこかに違和感を覚えていたとしても、正直に口に出せない。実際、プロで一定以上の経験を持つ投手からそんな失敗談を聞いたこともある。
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